医科コース冬期学習会

高等部1年対象

ブタの腎臓の解剖

 1.実施の目的  医科コースは、国公立大学の医学部進学を目指すコースです。近年、全国的に医師希望者の増加に伴い、ますます難化傾向にある医学部受験に対して、進学実績を着実に上げてきました。その為には、強いる学習も勿論大切となりますが、医師としての教養を深めるためにも主体的な学習を行える機会を医科コースの生徒たちに適切に与えていくことが重要だと考えています。
 本校教員だけでなく、時には、大学および研究所の多くの方々の協力を得て、様々な実験や観察を行い、積極的な姿勢で勉強できる学習環境を学校全体で整えていきたいと考えています。そして、生徒たちの興味・関心を高めた上で、協働的な学び合いを通して、将来、世界を牽引する医療系リーダーとなる生徒を育成していくことが重要だと思います。
 そこで、今回は通常の授業時間よりも長い時間を比較的自由に設定することができる冬期学習会で「ブタの腎臓の解剖」を行なうことにしました。日頃実践している授業内容をより深めた学習を行なうことで、「命」に対して謙虚な心を持ち、生物の複雑な構造や機能に興味関心を深めることを目的としました。

 2.実 施 日  平成29年12月23日(土曜日)
 高等部1年1組  8:50 〜 10:40
 高等部1年2組 10:50 〜 12:40

 3.担当教師  理科教諭(生物担当)熊井 優

 4.実施場所  自然科学棟(生物学実験室)

 5.参加定員  高等部1年生(高等部40期生)
 1組(在籍26名) 事前に欠席届が提出されていた者 9名 → 17名
 2組(在籍25名) 事前に欠席届が提出されていた者 1名 → 24名
                         (合計)   41名

 6.実験内容  ブタの腎臓の観察(ブタの腎臓の解剖)

実験風景

         
 先ずは、腎臓全体のスケッチを行ないました。特に、動脈や静脈そして、輸尿管の位置を確認しました。気づいたことは、すべて熊井先生が準備して下さった記録用紙に記入していきました。    動脈を探しだし、墨汁を注入しました。食肉用に加工されているブタの腎臓なので動脈や静脈そして輸尿管などは分りづらく、熊井先生の指導でなんとかみんなで行っていきました。    みんなで協力しながら作業を進めていきました。腎臓は「そら豆」のような形をしており、尿の独特な臭いもしていました。重さは200g前後で、感触についは固めのコンニャクという例が多かった。
         
         
 なんとか動脈を見つけ出し、墨汁を注入していきました。注射器との接続部を指で押さえながら、墨汁が漏れ出さないようにゆっくりと注入していきました。    墨汁が上手く注入されると、腎臓の表面が黒ずんできました。動脈は何カ所かで分かれているので、部分的に墨汁によって黒ずむことが確認できました。
【教師が行なった演示 テレビ画像】
   腎門と反対側の縁に沿って切れ込みを入れていきました。指を傷つけないように注意を払いながら作業を進めていきました。
         
         
 断面の観察を行ないました。「腎皮質」と「腎髄質」は、感触や色調の違いで区別が付きやすかったです。「腎皮質」は比較的柔らかく、墨汁によって黒みを帯びた部分が観察されました。    腎臓の構造は、大きく2つになっていることが確認することができました。1つは外側の「腎皮質」であり、内側に「腎髄質」が十数個あることが確認することができました。中心の白色の部位は「腎う」と呼ばれるところでした。    腎小体の中にある「糸球体」という毛細血管が糸くずのように集まっている様子が確認できました。生徒が作った組織標本を顕微鏡で観察しました。ここで血液が「ろ過」されて原尿が作られることを学びました。

生徒の感想

 ●  解剖は夏に行なったブタの眼球以来でした。人間にもある大切な臓器を解剖したのでワクワクしました。

 ●  思ったよりかたく弾力があった。しかし、ブタの眼球よりも切りやすく、綺麗に切りやすかった。また、血管などの見分けが難しく、特徴を抑えることが大事だと思いました。

 ●  腎臓は自分が思っていたよりも軟らかく、また、臓器としての構造も非常に複雑だった。腎髄質の部分がはっきりと観察でき、動脈、静脈、輸尿管も認識することができて良かったです。

 ●  腎臓はコンニャクのような感触でした。そしてメスを用いて切った時の感触が固かったです。墨汁を注入して実際に染まっていくのを見ることで、腎臓のはたらきが良くわかりました。

 ●  一見すると、動脈と輸尿管の区別が明確でなくて難しかった。そして、墨汁を注入してみると明らかに腎臓の染まり方が違っていたので感動した。半分に切ってみると染まっているところがはっきりと見ることができて、操作が上手くできていると思い感動しました。

  
 ●  どの穴が動脈なのか見つけにくかった。墨汁を注入すると皮がはっきりと膨らんでいることが確認できて固くなっていた。とても良い経験となりました。

 
 ●  動脈と静脈を見きわめることが難しく、少し苦労しました。ボーマン嚢の観察も、自分のスライドで見ることができなかったので悔しい思いをしました。

 ●  臓器の臭いは尿っぽい臭いだった。糸球体を顕微鏡で見ると、毛糸玉のように丸くなったものがいくつも観察された。

 ●  糸球体に実際に墨が入っているところを観察することができて驚いた。腎臓の構造を細かく見ることができ、改めて臓器の構造を考えることができて良かった。

 ●  普段見ることができない腎臓を観察することができて面白かった。腎臓の内部にたくさんの血管が見られてすごかった。腎臓を切る作業と墨を注入するのが難しかったです。

 ●  腎臓が思ったより弾力があって驚きました。動脈がなかなか見つけることができず、墨まみれになってしまいました。しかし、最終的には糸球体がしっかりと染まって顕微鏡で観察することができて良かったです。腎臓のピンク色が意外と美しかったです。

 ●  腎臓が思っていたよりも、ツルツルしていました。カミソリを入れた時に、ブタの眼球の時ほどではなかったけれど、弾力がありました。墨汁で綺麗に染めることができませんでした。


【腎臓の断面図】 写真 【腎臓の断面図】 生徒のイラスト



本校は「平成29年度私学版未来の科学者育成プロジェクト推進事業」に茨城県より採択されました。
本校の具体的な実践項目は、次の4点を柱としています。

 @ 学校設定科目「メディカルサイエンス」の新設
 A 理数融合講座・実験講座
 B 江戸川学園取手小学校のアフタースクールへの指導
 C 医科講話・医療教養講座・一日医師体験による医師としての自覚作り

今回は、上記の A に関しての項目となります。