海辺の生物体験

ウニの発生の観察

 目 的  :  21世紀における科学技術人材育成の中で、我々人類も含め、生命の本質を理解するためには、様々な生き物の生態について正しく理解することが大切です。今回、海辺の実際の生命現象を様々な視点から実験・観察することを通して、生命の本質についての探求心を養うことを目的に「海辺の生物体験」を実施することになりました。このプログラムは、お茶の水女子大学と提携したもので、主にウニの発生の観察を行いました。

 場 所  :  お茶の水女子大学 湾岸生物教育センター(館山臨海実験所)
〒294-0301
千葉県館山市香11

 日 程  :  平成29年11月18日(土曜日) 〜 19日(日曜日) 1泊2日

 参加生徒  :  4名

 引率教諭 :   医 科 コ ー ス 長
 兼 龍盛


 
 今回の実験で使用した「ウニ発生観察簡易キット」
有限会社お茶の水研究支援システム
お茶の水女子大学
清本正人 監修

11月18日(土曜日)

 11:00    JR館山駅(東口)集合
 11:45    現地到着予定
 12:00    昼食
12:30    開講式 及び 実験ガイダンス
 13:00    ウニの人工授精と卵割の観察
(人工海水の組成を変化させた時の発生の違い)
 18:00    夕食
 19:00    講義 細胞の分裂 (基幹研究院自然科学系 准教授 清本正人 先生)
 ウミホタルの採取 ← 今回も先生のご厚意によって予定の講義内容を変更致しました
 22:00    入浴・就寝


ウニガラ
5放射の様子がしっかりと観察されます
清本先生のコレクションより

11月19日(日曜日)

 8:00    朝食
 9:00    ウニのプルテウス幼生と稚ウニの観察
 11:30    閉講式
 12:00    昼食
12:30    現地出発

実験の様子

         
 ウニガラを手にして記念写真を撮りました。ウニは五放射相称形で、すべで海産です。古くから発生の研究材料として使用されてきました。    奥がムラサキウニ
 Anthocidaris crassispina
手前がアカウニ
 Pseudocentrotus depressus です。
今回使用したウニは産卵期の関係からアカウニを用いました。
   ウニの口器のまわりにはさみを入れて口器を取り除いて頂きました。殻の中の体液を捨てて、口器側を上にして0.5MのKClを注いだ。その刺激によって5つある生殖孔から5本の「筋」となって卵や精子が放出された。
         
         
 雌の場合は、淡黄色の卵が放出されました。卵の大きさは約0.1mmなので一つ一つの粒子が目でも確認することができました。    充分な量の卵を得る事ができました。この後、ウニを除いて上澄みの海水を捨てて、新しい海水を注いで卵を静かに撹拌しました。    雄の場合は、白色の精子が放出されました。精子の大きさは非常に小さいので白い筋として確認できますが、卵のような粒子は見えませんでした。
         
         
 今回も一人一台の顕微鏡をお借りして、観察ができる機会を頂けました。また、「ウニ発生観察簡易キット」を用いて観察を行いました。    実験の手引き書を見ながら、各自が実験操作を行いました。海水の入った試験管から海水を観察を行う小型シャーレに移しました。    ピペットの持ち方など指導を受けました。ゴムの圧力とピペットの向きの調節を同時に行うことが非常に難しかったようです。
         
         
 未受精卵のプレパラートを準備している様子です。プランクトン係数板を用いて、未受精卵の観察を行いました。    Herbstの人工海水に基づいて様々な塩を調整しました。この調整は事前に清本先生にして頂きました。    各自が担当して、組成を変えた人工海水を作りました。
         
         
 マイクロピペッターの使い方を清本先生より指導を受けました。高校では使わない実験器具なので、しっかりと聞いていました。    今回もウミホタルの採取も行いました。動物の体節の数など詳しい話しをして頂きました。    研究室にある顕微鏡を用いて発生過程の違いを確認しました。
実験結果
正常発生
受精膜が上がっていて、透明層が確認できた。
異常発生
透明層が確認できなかった。
あるイオンの影響によるものだと考えられる。
いろいろな卵割の状態が同時に観察された。
発生の調節(同期)が上手くできていない様子であった。
これもあるイオンの影響によるものだと考えられる。
ふ化が行われているが、細胞の塊が上手く接着できない様子が観察された。
胞胚になっているはずだが、形が保てていない。
これもあるイオンの影響によるものだと考えられる。


なお、この結果は第17回日本再生医療学会総会で発表する予定です。


本校は「平成29年度私学版未来の科学者育成プロジェクト推進事業」に茨城県より採択されました。
本校の具体的な実践項目は、次の4点を柱としています。

 @ 学校設定科目「メディカルサイエンス」の新設
 A 理数融合講座・実験講座
 B 江戸川学園取手小学校のアフタースクールへの指導
 C 医科講話・医療教養講座・一日医師体験による医師としての自覚作り

今回は、上記の A に関しての項目となります。