湾岸生物教育センター(館山臨海実験所)に隣接した海の様子【パノラマ写真】
左の漁港でウミホタルを採取しました。右に磯採取をした沖ノ島が見えます。
目 的 | : | 21世紀における科学技術人材育成の中で、我々人類も含め、生命の本質を理解するためには、様々な生き物の生態について正しく理解することが大切です。今回、海辺の実際の生命現象を様々な視点から実験・観察することを通して、生命の本質を探るための探求心を養うことを目的に「海辺の生物体験」を実施することになりました。このプログラムは、お茶の水女子大学と提携したもので、主に磯の生物の採取と観察をして、採取された生物の種の同定を行います。 |
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場 所 | : | お茶の水女子大学 湾岸生物教育センター(館山臨海実験所) 〒294-0301 千葉県館山市香11 |
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日 程 | : | 平成29年4月15日(土曜日) 〜 16日(日曜日) |
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参加生徒 | : | 20名 | |
引率教諭 | : | 医 科 コ ー ス 長 |
兼 龍盛 |
中等部3年3組担任 | 熊井 優 |
沖ノ島での磯採取の様子【パノラマ写真】
8:30 | 学校集合 (華美にならず、実験のしやすい服装) | |
9:00 | 学校出発 (バス中型27人乗り) | |
11:45 | 現地到着予定 (バス内での昼食) | |
12:00 | 開講式及び実験ガイダンス (沖ノ島での干潮予測時刻12:53) | |
14:00 | 海藻や動物の磯採集の終了 研究所にバスで移動 磯採取してきた生物の同定およびスケッチ |
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18:00 | 夕食 | |
19:00 | 講義 海の動物 (基幹研究院自然科学系 准教授 清本正人 先生) ウミホタルの採取 ← 先生のご厚意によって当初予定を変更致しました |
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22:00 | 入浴・就寝 |
8:00 | 朝食 | |
9:00 | ウニやヒトデの生態観察および解剖実習 ← 先生のご厚意によって当初予定を変更致しました | |
11:30 | 閉講式 | |
12:00 | 昼食 | |
13:00 | 現地出発(バス中型27人乗り) | |
16:00 | 学校到着 |
湾岸生物教育センター(館山臨海実験所)の実験室の様子【パノラマ写真】
磯採取を行う「沖ノ島」に向けて歩いているところです。風が非常に強い日でした。 | 清本先生から今回の磯採取の目的と諸注意を受けているところです。 | 磯採取をする場所に向かって歩いているところです。干潮の時間になるように日程を調節しました。普段は海面下となるところです。 | ||
清本先生より採取場所での注意事項をお話して頂きました。足元にはヒジキがまだ群生していました。 | 2人で組を作り生物を採取していきました。最初は生き物を見つけることが難しかったようです。 | フジツボなどの生物にも気が付くようになってきました。よく見ると足元には色々な生物がいました。 | ||
沖ノ島が隆起してできた地形であることが良くわかります。地層の様子も良くわかります。 | 大物を見つけて記念写真です。非常に風が強く足元にも注意しなければなりませんでした。 | 男子は元気に採取場所を広げていきました。大型のナマコやウミウシまで見つける生徒も現れました。 | ||
イソギンチャクも見つけることができました。観察場所が変わると生物群も著しく変化していました。 | 研究室に戻って生物の分類に関する基本的な講義を受けました。清本先生のご専門は棘皮動物です。 | 採取してきた生物をバットに並べていきました。男子は怖いもの知らずに触っていきました。 | ||
研究所の図鑑を用いて、採取してきた生物の同定をしました。これが本当に難しかったです。 | 写真での記録だけでなく、スケッチによる記録も行いました。 | ウニやナマコ、ウミウシなど色々な種類を次々に分類していきました。 | ||
実験ノートに綺麗に書かれたスケッチです。生物の特長が上手く表現されていると思います。 | スケッチをすることで気づかなかった細かな違いなど理解しやすくなりました。 | 図鑑で調べても分からない時は、専門家である清本先生に教えて頂きました。 | ||
夕食風景です。中等部2年生の男子6名の座席です。 | 中等部3年生2名と中等部2年生の座席です。先輩2名が後輩を上手く指導してくれました。 | 中等部2年生の女子5名の座席です。手作りの食事は大変においしかったです。 | ||
中等部2年生の女子6名の座席です。女子にとってはボリュームがあったかも知れません。 | 清本先生のご厚意によって、今回も夕食後にウミホタルの採取をさせて頂きました。 | 越冬したと思われるウミホタルをたくさん採取することができました。 | ||
研究所の高性能の顕微鏡を使ってウミホタルを観察しました。 | ウミホタルに寄生する生物も観察できました。生物の多様性を知ることができました。 | ウミホタルの体の仕組みなどイラストを用いて説明して下さいました。 |
沖ノ島の前で記念写真
満潮時(6時30分)の海の様子を観察するために研究所の前をお散歩しました。 | 引率教諭の熊井先生の左後にある小島が、昨日磯採取を行った「沖ノ島」です。 | 昨晩採取したウミホタルを、清本先生が長期保存できるように乾燥して下さいました。 | ||
乾燥ウミホタルを手のひらで潰しても変化がありませんでしたが、水を加えると青白く光り出しました。 | 動物の対称性を学習した後、刺胞動物であるウニやヒトデの仲間を解剖しました。 | 体の仕組みを正しく理解していれば、容易に美しく解剖も行えることが理解できました。 | ||
ウニの体を横方向に切断したものです。五放射の構造が基本となっていることがよく分かりました。 | ウニもヒトデも同じ棘皮動物という仲間です。外見だけでなく内部構造も五放射が基本の構造となっていることがわかりました。 | 論文の図だけでなく、実際に解剖して観察することにより新たに気づくこともありました。 | ||
医師を志している生徒が多かったので、解剖に関しても手際よく行うことができました。 | 解剖に関しては、最初は少し躊躇していましたが、慣れてくると積極的に参加していました。 | 男の子達も生物の構造の不思議さに興味津々でした。何よりも体験することが、自然科学を学ぶ上で重要だと考えています。 | ||
ウニの硬い殻を割るところだけは、安全面を考慮して清本先生が行って下さいました。 | 生物が専門の熊井先生も生徒の質問に答えていました。できるだけきめ細かく対応しました。 | 机間巡視を細かにしながら生徒の質問に丁寧に答えていく熊井先生です。高校では生物を担当していますが、専門は環境系です。 | ||
研究室には色々な生き物がいます。先生の指導の下で観察をさせて頂きました。 | 自分たちが解剖で使用した実験器具は、すべて自分たちで洗浄しました。 | 使用させて頂いた実験室の清掃も自分たちで行いました。隅までしっかりと行いました。 | ||
床は水拭きをした後、綺麗なモップで乾拭きを行いました。先輩達が指示を出しました。 | 屋外では男子を中心として、昨日磯採取で使用した軍手や水槽・バケツなどを洗いました。 | 採取した生物を入れておく容器もすべて真水で洗いました。生物が出した粘液などを落とすのが大変でした。 | ||
昼食はお弁当です。食事の配膳などはすべて自分たちで行いました。 | 始めの頃は手順が分からず戸惑っていましたが、自ら仕事を見つけて動けるようになりました。 | 器の配置などにも注意して、それぞれの仕事に応じた動きをすることができました。 | ||
原始的な脊索動物である「ナメクジウオ」です。脊椎動物の最も原始的な祖先に近い動物であると考えられていることもあり、生きている化石と呼ばれています。 | ウニやヒトデと同じ棘皮動物の仲間である「ウミユリ」です。深海に生息しており、生きている化石としても有名です。動いている生体を見る貴重な経験を得ることができました。 | 死んだウミユリの体の一部です。今回の解剖で学んだように、五放射の対称性が確認できました。人工物のような幾何学的な美しさもありました。これでも動物です。 |
今回「海辺の生物体験」を通して、磯に生息する生物とその生態について考え、学ぶことができました。今まで見たことがない様々な生物の採取や観察、そして解剖をしたりしました。何よりも自分たちの手で実際に生き物に触れることができました。普段の生活ではあまりすることができないような体験をここではたくさんすることができました。その中で最も印象に残っているのは「ウミホタル」を使った実験です。夜の海でウミホタルを採取して、観察したところ非常に綺麗な青白い光を見ることができました。ウミホタルを見たのも、夜の生物採取も初めての体験だったのでとても新鮮で楽しかったです。また、研究室に戻ってウミホタルが泳いでいる水槽に電流を流すと、その刺激によってウミホタルがルシフェリン-ルシフェラーゼ反応によって発光したりと、不思議な発光生物の生態を見ることができました。
他にも、「ウニ」や「ヒトデ」の仲間を解剖して、生物の体の対称性についても学ぶことができました。磯で採取した生物を分類したり、それに基づいて図鑑を用いて同定したり、後輩達と協力して過ごした4月15日〜16日の2日間は「非日常の学校生活」と言えるような充実した時間となりました。今後も様々なことに挑戦し、自分たちの可能性を広げていきたいと思いました。
平成11年に出された『中学校学習指導要領解説−理科編−』では、「小学校、中学校、高等学校を通じて、児童・生徒が知的好奇心や探究心をもって、自然に親しみ、目的意識をもった観察、実験を行うことにより、科学的に調べる能力や態度を育てるとともに、科学的な見方や考え方を養うことができるようにする」と示されています。そのため、本校でも自然体験や日常生活との関連を図った、学習及び自然環境と人間とのかかわりなどの学習を一層重視するとともに、生徒がゆとりをもって観察や実験に取り組み、問題解決能力や多面的、総合的な見方を培うことを重視し、授業内容の改善を図っています。その一環として、千葉県館山市の自然豊かな海辺に生きている、実際の生命現象を様々な視点から実験・観察することを通して、生命の本質を探るための探求心を養うことを目的に「海辺の生物体験」を昨年度より実施することになりました。本校は、お茶の水女子大学湾岸生物教育センター(館山臨海実験所)を利用させて頂き、基幹研究院
自然科学系 准教授 清本 正人 先生から直接指導を仰ぐ素晴らしい機会を得ることができました。先生のご専門は棘皮動物の細胞分化に係わる領域です。特に、ウニの発生や生殖について研究されており、幼生の骨を作る細胞の発生運命の決定に係わる内容では様々な仕事をされています。また、先生は多くの学校の指導にも尽力されており、中・高校生を対象にした海のフィールドワークに関する指導も経験が豊富で、学校の授業では教えることができないような活きた体験と、専門家としての非常に深い内容でありながらも生徒にとって分かりやすい講義が展開されておりました。今回は、先生のご厚意によってウミホタルの採取だけでなく、棘皮動物の解剖など、今までにない内容の活動ができ、非常に充実したものになったと思います。生物の多様性や体の構造の不思議さに直接触れることで「命」に真摯に向き合える姿勢にも繋がっていくと私は確信しました。
また、実験や観察の研究活動だけを重視したものではなく、各自の食事の配膳や研究室の掃除などの徹底した指導も、本校の道徳教育の実践の場に繋がっていると思います。今回の「海辺の生物体験」に参加した生徒たちが、各自の主体性を発揮し、自らの道徳性について考える機会も得ることができたと思います。今回も多くの参加希望がありましたが、教育内容の質を保つためにも20名という設定となっております。参加することができた20名には、彼等の将来に向けて良い経験をさせることができたと考えております。
医科コース長 兼 龍盛(化学担当)
沖の島の観察対象としての素晴らしさが特に印象に残りました。島の四方で作られている生態系の違いがよく分かり、高校生物で学ぶ「中規模攪乱が生物多様性を上げる要因になる」という内容が実際に分かりやすく観察できるフィールドでした。また、教本でしか見る事のできない生物に実際に触ってみる、発光現象を実際に観察する事は生徒の心にも強く残った事と思います。私自身、初めての経験が非常に多く、大変勉強になると共に、様々な生命現象の観察に感動しました。
ナマコが攻撃されると内蔵を出すという内容はTVなどでもたびたび取り上げられていますが、実際はなかなか出てこなかったり、また、アメフラシの水管を刺激し続けると、刺激に対して慣れが起こるのですが、これは教科書通りに上手く出来たりと、やはり実体験に基づく学習はとても重要だなと感じました。今回の海辺の生物体験を通して、生物学により強い関心を持ってくれる生徒が出てきてくれると思います。
中等部3年3組担任 熊井 優(生物担当)