メディカルサイエンス 第1回目 4月7日

         
 物理
『気柱共鳴の実験』
   化学
『白い粉の正体を探れ』
   生物
『食作用の観察』

メディカルサイエンス(学校設定科目)の新設

 高等部1年生から3年生に、学校設定教科として「理数科」を新設し、その中に学校設定科目として「メディカルサイエンス」を設置し、医師としての素養を育むことができる教育プログラムを立ち上げました。3学年とも同時間に授業を設定し、縦関係のつながりをより深め、互いに教え、学び合う協働の活動を実践していきます
 既存の科目の内容を深化しつつも、特に、将来医師を目標とする生徒に向けて、その資質や能力を伸ばしていくためには教科の枠組みを越えた新しい学校設定科目の設立が重要だと考えました。現代に課せられている医療分野の諸問題や、観察・実験を通して科学的思考を更に深めるために、大学の先生方の協力を仰ぎつつも本校の教育目標に照らし合せて「メディカルサイエンス」を立ち上げ、様々な見知から研究を行っていくことが目的となります。
 今年度のメディカルサイエンスの授業時間は、金曜日6校時(14:30〜15:20)となりました。

メディカルサイエンスの内容

メディカルサイエンスは以下の4つの項目から成り立ちます。内容は「医科」に特化したものとなりますが、その授業の基本となる重要な視点として、数学及び理科の各科目(物理・化学・生物)それぞれにつながりがあることや、それぞれが有機的にかつ機能的に組み合わさることによって生徒の知識が深まったり、新たな発想が生れたりするような工夫や仕組みを施していきます。

ア)医療問題(再生医療社会における問題点の検討)
 京都大学の山中伸弥教授のノーベル賞受賞やiPS細胞を用いた治療の研究などにより、再生医療の最先端技術は国民にもその存在を知られるようになりました。しかし、我々一般市民にとっては、期待とともに不安を感じるところにあります。そこで、将来医師を目指している医科コース生徒を対象にして、再生医療について概要を学び、未来の再生医療の問題点について議論できる生徒の育成を目指します。

 医療問題に関しては、茨城大学教育学部養護教諭養成課程基礎医学研究室の石原研治教授から指導を仰ぎます。その授業の後には、先生から課題が与えられて、それぞれの生徒が課題に取り組みレポート作成を行ないます。発表の準備の際において、時には縦断的に学年を越えて生徒間での指導を行わせることもあります。経験豊かな高3生から指導を受けることで互いに刺激し合い、切磋琢磨できる教育環境も整えていきます。

イ)科学実験
 科学の甲子園で取り扱われるような先駆的な実験を取り入れて、一見すると正解のないような課題に対して、創意工夫や思考錯誤を何度も何度も繰り返すことで規則性や法則性を導き出し、科学的に対応していく姿勢を育みます。
 また、お茶の水女子大学湾岸生物教育センターの清本正人准教授と海洋実験及びウニの発生に関する実験、観察の計画をしています。その実験内容は、海藻や動物の磯採集と観察、プランクトンの採取と観察、ウニの発生の観察や海の近くに生きる動植物の観察と標本作製を予定しています。これらは長期の夏期休暇中や冬期休暇中などを利用してサンプルを採取し、本校に持ち帰り継続的な観察や標本作成を行った上での同定作業など行う予定です。また、ウニの発生に関しては学年に応じたテーマを設け継続的な観察や実験を行っていきます。生命現象を様々な視点で実験、観察することで、医師としての生命の本質を探るための好奇心を養う事を目的とした体験活動を実践できるように計画しています。

ウ)医療統計
 科学実験から得られた生のデータを処理して、医師として正しく数値を読み解く能力を育成します。平均値だけでなく標準偏差や標準誤差など統計的な定義や意味を考察し、どのように表現していくのかを学んでいきます。

エ)科学英語
 実験や観察を発表する際に、英語によるプレゼンも視野に入れた指導を行うことで、英語での発展的な科学学習や、体験により国際性を兼ね備えた人材として科学英語の実践力を高めていきます。

メディカルサイエンスの評価方法

 学びの主体は何よりも生徒自身であり、常に知的好奇心を持って様々な視点から自然現象や社会事象を観察し、その中で気付きから疑問を形成しそれを事後に再確認できるような「メディカルサイエンス・ノート」を作成します。探求課題の設定に関しては、生徒の主体性を尊重しつつ、数学や理科における自然科学的な手法により探求が可能となるような指導を事前に行っていきます。そして、このメディカルサイエンスを学ぶ上で、観察および実験の内容やその中で生じた疑問や、それに対する自らの思考の過程等は「メディカルサイエンス・ノート」に常に記録させ、自己の成長の過程を事後に再認識できるとともに、これを評価の場面でも用いていきます。
 留意点としては「メディカルサイエンス・ノート」等を通じて生徒の独創的な思考や探求の過程における態度も評価するようにしていきます。実験報告書や発表の際に作成したパワーポイントやレポートに関しては、生徒たちによる相互評価だけでなく自己評価を取り入れるなど、多様な視点で多面的に生徒を評価できるような配慮を講じていきます。そして、複数の教師による評価を行うことで、一人の生徒に対して複合的な視点で分析・評価するような方法を取っていきます。

第1回目 4月7日(金曜日)

物T 実験テーマ『気柱共鳴の実験』

高等部1年1組
高等部2年2組

高2生は高1時に実験を行っているので、操作を分かっているはずである。原理を含め、高1生に教えながら測定を行い、音叉の振動数や音の波長、開口端補正などを求めます。
音叉の振動数は別な装置で実測し、その値と実験から求めた値を比較し、誤差の原因について考えさせます。

物理学を担当している大串先生から「定常波」についての基本的な講義をウェーブマシーンを用いて受けているところです。 音叉を用いて共鳴点を探しました。音叉の振動数と管の固有振動数が等しくなったときは、定常波になっているので、音が大きく響き共鳴が起きました。 液だめを上下させて、基本振動、3倍振動が起きる場所を班員が協力して測定しました。音叉の波長を求め、音叉の振動数を計算で求めることもしました。


 生徒Aさんのメディカルサイエンスノート    生徒Bくんのメディカルサイエンスノート

生徒の感想

初めてメディカルサイエンスを受けてみて、始めは高校1年生と高校2年生との間に壁がありましたが、実験をしていくうちに少しずつ距離が近づくことができました。共鳴点を見つけるのは、最初は苦戦しましたが、何度も実験を行うことでコツがつかめてきました。実験結果からかなり正確な値を出すことができたのはとても良かったです。また、高校1年生の時の復習がもう一度できたことも、とても勉強になったので良かったと思います。今回はメディカルサイエンスの最初だったため、あまり上手く高校1年生に教えることができませんでした。だから、次回からは後輩に教えられるだけの余裕を持ちながら、より正確な実験ができるように努力をしていきたいと思いました。
正直、今回の実験では知らない公式等があったりしてなかなか理解できませんでしたが、先輩達のリードにより実験内容やどのようなことが分かるのか理解できるようになってきました。振り回す速度によって音程が変わる筒など、とでも新しく面白いことばかりで楽しかったです。
初めて話す高校1年生に今回の実験の進め方を分かりやすく説明するためには、どのように話したら良いのか悩みながらも、協力して実験をすることができて良かった。実験で出した値と理論値ではやはり誤差が生じたけれども、相対誤差は0.8%だったので、なかなかの実験をすることができたと思う。誤差を生じる原因の中で、共鳴点の読み取りはゆっくりと実験できる時間があったらもう少し正確な値に近づけたと思いますが、素早く的確に実験を行う技術を身に付ける必要があると感じました。また、今回の授業で1つの実験では同じ器具を使い続けなければならないことを学びました。今まで気にして実験を行っていなかったので、今後気を付けていきたいと思いました。

化T 実験テーマ『白い粉の正体を探れ』

高等部2年1組
高等部3年1組

正体不明の白い粉を色々な試薬を用いることで、白い粉を同定する。化学実験の際には、溶液の混入など配慮しなければならない点があり、そのような実験操作について考えさせます。

化学を担当している石塚先生から、今回用いた「白い粉」と「試薬」の説明を受けているところです。 今回は教室での化学実験を実施するために、限られた器具で実験をしなければなりません。そのためマイクロスケールでの実験技術を応用しました。 一通り反応を調べて、記録をノートに書き残しました。その後、4種類の「白い粉」の正体を議論していきます。


 生徒Cさんのメディカルサイエンスノート1枚目    生徒Cさんのメディカルサイエンスノート2枚目

生徒の感想

自分たちで使う指示薬を考えて実験をしていくのはとても難しいと感じました。物質の性質を正しく頭に入れていないと何をしたらよいのか分からなかった。今回の実験では五感をあまり使えなかったが、後から考えてみれば視覚などでも分かる情報もあったと思いました。正しい知識を深めることが更に必要だと感じました。そして、何よりも後輩達を上手くリードすることができなかったので申し訳ないと感じました。
この実験で私が一番感じたことは、自分の知識不足でした。物質の候補としてあげられた6つの物質についての情報や性質(水への溶け方や指示薬を滴下した時の色の変化など)を4つの白い粉を区別するために必要な量が頭に入っていなかったことが、この実験を通して強く感じることができました。また、高3の先輩方を見て「どのように工夫をしたら実験をしやすいか」と考えることも大切なのだと思いました。
最初から何をやればいいのだろうと、全員で戸惑ってしまい、とりあえず「水」だ! と、白い粉にそのまま水をかけようとしたら止められて…。一番に今回痛感したのが、手順ややることが事前に分かっているときと、そうでないときの違いと、その大変さでした。自分たちで答えを導き出すために皆で試行錯誤しながら考えるのは、今まで学んだことや知識を引き出し、頭をたくさん使い、たくさん悩みました。メディカルサイエンスの時間では、色々な薬品を試すだけで精一杯で、あまり細かいことまで話し合うことができませんでした。
 それでも、いつも以上に皆で一緒に考えたり、深めあったことは、とても良い経験になりました。何よりも実験中とても楽しかったと今振り返ってみて思います。私の知識不足のせいで、先輩方にも迷惑をかけてしまいましたが、そんな私を先輩方は優しく教えて下さったり、嬉しかったです。今度こそっ!! もっと手際よくどんな課題がでてもパッと対応できるようにしていきたいと思いました。

生T 実験テーマ『食作用の観察』

高等部1年2組
高等部3年2組

食作用は、脊椎動物ばかりではなく、無脊椎動物の血球細胞でも同じように観察することができます。今回の実験では、生きたコオロギの体内に墨汁を注射することによって、コオロギの血球細胞に墨汁の黒い粒子が異物として取りこまれている様子を観察します。

生物学を担当している稲石先生から「食作用」に関する基本的な講義を受けているところです。実験操作など注意を受けました。 生物学を担当している渡邉先生の実験の様子です。説明が終り各班での実験が始まりました。 生きたコオロギを氷冷麻酔をしてから、腹部に墨汁を0.1mL注入している所です。その後、ギムザ染色液を用いて食作用を確認しました。


 生徒Dくんのメディカルサイエンスノート    生徒Eくんのメディカルサイエンスノート

生徒の感想

高校1年生の2人組とペアを組むということで高校3年生として自分がしっかりと引っ張っていかなければならないにもかかわらず、上手くリーダーシップが取れなかったので、次回は頑張りたいです。そして、コオロギを触ることに対してとても抵抗があって、今回は触ることができなかったので、できる限り努力してできるようにしたいと思いました。そして、生物の実験を今まであまりしてこなかったので、とても良い機会で楽しむことができました。実際に注射器を使用してみて、今回は慣れなかったけれども、医師になる前にやることができて良かったです。次の実験も高校3年生としてしっかりと後輩を引っ張って、しっかりと実験内容も実験結果も理解して頑張りたいと思います。
生きたコオロギから血球の実験を行うのは初めてでしたが、教科書の中の図のような細かいところまでは詳しく見ることができなかったが、食作用しているのがしっかりと見えた。医学部を志す身として、とても良い実験になったと思います。
コオロギを掴むことに気持ち悪さを感じコオロギの腹がプニプニしていたことに気持ち悪さを一層感じ、このようなことではいけないと深く反省をしました。後輩の手前、先輩らしくしなければと張り切りましたがプレパラートを割るという大失態を犯してしまいました。今後はこういったことがないように細心の注意を払いたいと思います。染色した細胞は、とてもよく見えて嬉しかったです。私たちの体もこのようにして害悪のあるものを除いているのだと感動を覚えました。私たちの班はあまり上手に注射することができなかったために1匹につき3回程度刺してしまい、コオロギが死んでしまっているのではないかと危ぶみましたが、元気に動き回っており生命力の強さを感じることができました。第1回目は失敗も多くあり、次回からは最善の結果になるように頑張りたいと思いました。



本校は「平成29年度私学版未来の科学者育成プロジェクト推進事業」に茨城県より採択されました。
本校の具体的な実践項目は、次の4点を柱としています。

 @ 学校設定科目「メディカルサイエンス」の新設
 A 理数融合講座・実験講座
 B 江戸川学園取手小学校のアフタースクールへの指導
 C 医科講話・医療教養講座・一日医師体験による医師としての自覚作り

今回は、上記の @ に関しての項目となります。