茨城大学遺伝子実験施設 科学の甲子園のための 実技トレーニング

目的

 平成28年11月19日(土曜日)に、つくば国際会議場で「平成28年度科学の甲子園 茨城県大会」が実施(16校49チーム 参加人数:294名)され、その結果「江戸川学園取手高等学校Aチーム」が、第1位(県知事賞)を受賞しました。
 平成29年3月17日(金曜日)〜20日(月曜日)に、つくば国際会議場にて、「第6会科学の甲子園 全国大会」が開催される予定です。
 そこで、本校が 茨城県代表 として選抜されました。

 そして、今回は科学の甲子園のための(生物学)実技トレーニングと生物学に関する知識を深めるために、茨城大学遺伝子実験施設で実験を行い、更には、茨城大学農学部長・農学研究科長である 久留主 泰朗 博士 から特別講義をして頂きました。
 

場所

茨城大学遺伝子実験施設
農学部 阿見キャンパス 茨城県稲敷郡阿見町中央3-21-1

日程

平成29年1月21日(土曜日)〜1月22日(日曜日) 2日間

1日目のスケジュール

 時間    内容
 10:00    はじめに
 10:10    本日の実験内容「人力PCRでDNAを増やそう」について
 10:40    マイクロピペットの使い方のトレーニング
 11:00    実験1. PCR法によりDNAを増幅する
          ● PCR反応溶液の調整
          ● 人力サーマルサイクラーによるPCR
 12:30    お昼休み
 13:30    実験2. PCR産物のアガロースゲル電気泳動
          ● アガロースゲルへのサンプルアプライの練習
          ● 人力PCRにより増幅したDNAの電気泳動
          ● 机上PCR(電気泳動中)
          ● ゲルの染色およびUV照射によるDNAバンドの確認
          ● 班ごとでの結果の考察
 14:30    班ごとの結果発表および総合考察
 15:00    終了予定

1日目の実験風景

     
 古谷先生より今回の実験の概要を受けました。    マイクロピペットの取り扱いを学び、使い方のトレーニングをしている様子です。
     
     
 机上PCRです。これでDNAの増幅過程を分かり易く説明して頂きました。    1段階目のDNAの増幅が完了した所です。これが同じ仕組みによって指数関数的に増幅していく様子がモデルを使うことでよくわかりました。 
     
     
 PCR法によって増幅したDNAをアガロースゲルで電気泳動をしている様子です。    人力PCR法(30サイクル)によって、DNA断片が増幅(原理的には、230倍)した様子が結果でも明らかになりました。

2日目のスケジュール

 時間    内容
 10:00    本日の実習内容「疎水性クロマトグラフィーによりGFPタンパク質を精製しよう」について
 10:40    実験1. 疎水性クロマトグラフィーによりGFPタンパク質を精製する
        (1)GFPタンパク質を発現する大腸菌の観察
        (2)大腸菌からのタンパク質抽出
        (3)疎水性クロマトグラフィーによるGFPタンパク質精製
 12:30    お昼休み
 13:30    実験2.精製タンパク質のSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)による分離
        (1)タンパク質サンプルの精製
        (2)タンパク質サンプルのアプライ
          ● サンプルアプライの練習
          ● アプライ本番および電気泳動の開始
 14:30    久留主 泰朗 博士の講義
 15:10    施設内見学
 15:30    精製タンパク質の SDS-PAGE による分離
        (3)SDS-PAGE および ゲルの染色とタンパク質分離の確認
 16:00    終了予定

2日目の実験風景

         
 本日の実験内容についての説明を受けました。1日目はDNAでしたが、2日目はタンパク質が対象になりました。
   タンパク質にはGFPを用いたので、紫外線を照射することで、その存在を確認することができました。    タンパク質サンプルのアプライの練習の際に久留主先生からも直接指導を仰ぐことができました。
         
         
 アプライ本番の様子です。このあと電気泳動の開始すると、両極から水素と酸素の気体が発生しているのも確認できました。    精製タンパク質のSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動をした後の分析した結果です。GFPの散在に関しては、蛍光で確認することができました。    カメラを用いても記録を残しておきました。この後、染色をして色々なバンドが現れてきました。比較することで、いろいろな議論を深めることができました。
         
         
 遺伝子実験施設の施設見学もさせて頂きました。研究室の雰囲気など肌で感じ取ることができました。    高性能のPCRやシークエンサーなども見学させて頂きました。    染色が終り、今回の実験の結果を議論しました。SDS-PAGEによってタンパク質の分子量を見積もる事ができましたが、GFPの不思議な性質も知ることができました。

実験後の生徒のアンケート

 ●    DNAやタンパク質の電気泳動をしたとき、本来は目には見えないミクロの状態が、目に見える形ではっきりと映し出されたことが印象に残りました。また、久留主先生の講義や施設内見学も楽しく興味深いものでバイオテクノロジーに対する興味をかき立てられました。

 ●    DNAの複製をするにあたって、自分が思っていたよりも簡単な手順でできたことが印象に残りました。大腸菌から実際に蛍光タンパク質を採取して、生物の遺伝子を操作することで、性質を変化させたり、新しい性質を出現させることが可能であることを実感できたことが良かったです。

 ●    お忙しい中、私たちのために時間を割いて頂いて有り難うございました。実験器具の使い方や、自分たちのDNAが混ざり合ってしまわないように細心の注意を払う必要があることなど、学びを深めさせて頂きましました。特に、印象的だったのは、実験後の考察に時間を掛けたことです。普通学校で行う実験は内応も簡単ですし、結果がどうなるのかはおおよそ予想できてしまうものばかりなので、今回のようにグループ内で話し合うことは新鮮でした。今まで以上に生物に興味を持つことができました。

 ●    使ったことも、見たこともない実験器具の数々。1日目に成功しているかどうか分からないまま電気泳動し、染色をし、紫外線を照らしたときに、しっかりとバンドとなって現れた時の感動は忘れることができません。2日目のGFPの実験の最後でGFPのないところでも様々な質量のタンパク質がバンドとなって現れたのはとても印象的でした。そして、とても綺麗だなぁっと感じました。

 ●    正確な考察をすることの難しさを感じました。また、実験操作は多少できるようになったとしても、実験のために各種バッファーを調整したり、ゲルを調整したりといった下準備、また実験計画そのものの決定などはまだまだ自分にはできないと感じました。自立して探求ができるように成長していきたいと思いました。また、GFPの蛍光の美しさに心惹かれました。

 ●    マイクロピペットの使用法など勉強になりました。また、GPFの立体的構造によって、電気泳動の移動速度が異なっていくことが実験結果からよくわかりました。

 ●    DNAの電気泳動の結果を見たときに、しっかりとした結果が現れたことに感動しました。人力PCR法で30サイクル30秒ずつ温度変化させて増幅できたことが印象に残りました。

 ●    実際にクロマトグラフィーをしたことや、一つの実験に必要な実験器具や試薬の多さを実感しました。タンパク質の電気泳動に関する考察をみんなで議論したことや、タンパク質の実験におけるGFPの便利さを知ることができました。

 1.    この「実験教室は」、今後の学習への理解に役立ちましたか?
     非常に役に立った 少し役に立った 
     87.5%  12.5%


 2.    この「実験教室」の時間はどうでしたか?          
     やや短かった  ちょうど良かった
     37.5%  62.5%


 3.    この「実験教室」の内応はどうでしたか?           
     やや簡単だった  ちょうど良かった  やや難しかった
     12.5%  37.5%  50.0%


1日目は、マイクロピペットの使い方を学び、用意された材料のDNAを簡易的な方法で抽出し、採取しました。そして、採取したDNAを現代のバイオテクノロジーを支える基本的な技術の一つである「アガロースゲル電気泳動法」によって分離し、DNAの確認を行いました。また、アガロースゲル電気泳動の原理を習いました。
 2日目は、遺伝情報がDNA→RNA→タンパク質の方向に合成される(セントラルドクマ)ことを学ぶことができました。また、GFPを利用してタンパク質の構造と活性についても考察することができました。

 非常にお忙しい中、本校生徒のために綿密な実験を準備して頂いた茨城大学遺伝子実験施設の皆様に感謝申し上げます。


本校は「平成28年度私立学校世界に羽ばたく人材育成推進事業」の「私立版未来の科学者育成プロジェクト推進事業」に茨城県より採択されました。
本校の具体的な実践項目は、次の4点を柱としています。
 @ 理数融合講座・実験講座
 A 再生医療社会における問題点の検討
 B 江戸川学園取手小学校のアフタースクールへの指導
 C 医科講話・医療教養講座・一日医師体験による医師としての自覚作り

今回は、上記の @ に関しての項目となります。