1. | 目 的 | 専門性が高い大学の教授から直接指導を仰ぐことで、幅広い教養と豊かな人間性、自ら考え解決するために必要な基本的知識と、建設的に行動できる態度と習慣を身に付ける。 |
2. | 実施日 (時間) |
2020年10月21日(木) 第2回目(全8回の実験を予定しています) 前半 16時15分 〜 17時50分 後半 17時55分 〜 19時30分 |
3. | 講 師 | 千葉科学大学 薬学部 薬学科 今井 信行 教授 このアフタースクールの大学側の統括責任者 千葉科学大学 薬学部 薬学科 野口 拓也 准教授(今井グループ) 江戸川学園取手中・高等学校 医科コース長 兼 龍盛 このアフタースクールの高校側の企画・運営 |
4. | 会 場 | 江戸川学園取手中・高等学校 自然科学棟 化学室β |
5. | 参加者 | 高等部2年生対象 前半 23名(欠席者:3名) 後半 27名(欠席者:2名) |
6. | 実験内容 | エステル化と加水分解 |
☆ 本来は、千葉科学大学の学長と本校の学校長および関係者が集まって調印式典を行う予定でした。今年度は、新型コロナウイルス感染症予防の観点から、残念ながら式典は行いませんでした。
☆ しかしながら、書面にて令和3年9月22日に千葉科学大学と江戸川学園取手中・高等学校は、教育提携に関する協定書に調印しました。
有機化学実験を体験@〜G(生徒の実験操作の技術や理解度を見極めて、実験内容を適宜変更していく予定です)
回数 | 日付 | 担当講師 | 実験の題目(予定) | 実験の内容(予定) | 備考 |
1 | 10月14日 |
今井 信行 川島 裕也 |
ルミノール反応 | ルミノールを合成し、ルミノール反応で同定 | 極めて少量(mg単位)の試薬を用いる実験 |
2 | 10月21日 |
野口 拓也 | エステル化と加水分解 | エステルの合成およびせっけんの合成 | センター試験20,18,13年に類題が出題 |
3 | 10月28日 |
野口 拓也 | 鎮痛剤と湿布薬 | 加水分解とエステル化の応用 | センター試験18,14年に類題が出題 |
4 | 11月04日 |
野口 拓也 | 電子レンジ@ | 実際の有機化学反応を体験@ アセトアミノフェンの合成とTLC |
センター試験19,15年に類題が出題 |
5 | 11月25日 |
野口 拓也 | 電子レンジA | 実際の有機化学反応を体験A アセトアミノフェンの合成と分液による分離 |
センター試験19,15年に類題が出題 |
6 | 12月02日 |
川島 裕也 | 電子レンジB | 実際の有機化学反応を体験B アセトアミノフェンの合成と濃縮および単離精製 |
センター試験19,15年に類題が出題 |
7 | 01月13日 |
川島 裕也 | 電子レンジC | 実際の有機化学反応を体験C アセトアミノフェンの合成と濃縮および単離精製 |
センター試験19,15年に類題が出題 |
8 | 01月27日 |
今井 信行 川島 裕也 |
メチルオレンジの合成 | アニリンからジアゾニウム塩の調整とジアゾ化 | センター試験19,15年に類題が出題 |
1回目の実習は、有機化学実験に向けて、生徒の心をキャッチするルミノール反応、2〜3回目はカルボン酸・エステル関連、4〜7回目は含窒素化合物関連を配置しました。薄層クロマトは4回目に原理を説明します。そして6回目まで反応を追跡、生成物の同定の用途で使用します。今回用意したテーマのほとんどはセンター試験にも出題されており、実験を行い、関連するセンター試験の問題を解説することも可能です。
今回の実験講師は、今井グループの 野口 拓也 准教授です。本講座のために、実験テキストを準備して頂きました。実験の反応、実験操作、課題、そして、発展とまとまった形式のテキストで、高校生用に分かりやすく編集されたものでした。 | 野口先生が作成された実験テキストに基づいて、今回の実験の流れを教えて頂きました。一通り説明が終わると、「白い粉の正体」について課題を与えてくださいました。これから有機化学実験において、重要で基本的な考え方について実験を通して理解できる内容でした。 | 実験操作で分からないことがあればすぐに野口先生が丁寧に教えて下さいました。今回は、酢酸エステルを作成しました。触媒の効果を考えるために、加える濃硫酸の量を変化させることで、定量的な変化を考えることまで行いました。 また、水酸化ナトリウム水溶液を使用するので、安全に考慮して安全メガネを着用しました。 |
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高校の有機化学実験の多くは、定性実験が主なものになっている。呈色反応を利用して、目的物質が検出可能な量までできていたのか、それとも生成量が少なく検出できないのか(そもそもできていなかったのか)調べることが主となっている。 しかし、今回はできた酢酸エチルが水に溶けにくい物質であることから、その量を測定することで、様々な仮定から生成量の体積を見積もって定量的な変化を考察した。 |
実験によって得られた酢酸エチルをもちいて、今度は加水分解しました。原理は「白い粉の正体を探れ」で学んだのですが、実際の物質を見て考察すると、知識が定着していないので難しかったようです。しかしながら、「何よりも実際に手を動かしてから考えてみよう!!」と野口先生は生徒に言って回っていました。何が起きるのか予想しながら、試薬を加えていくと色々な気付きがあったようです。 | 今回の実験の最後は「油脂のけん化」です。サラダ油にいろいろな試薬を加えていくと、セッケンができました。今回の実験で得られたセッケンは、泡立ちとPH試験紙を用いて液性を調べることで確認しました。コロイドの分野での「塩析」を実際に確認しました。写真は、実験で得られたセッケン水溶液に飽和食塩水を用いて塩析をしているところです。目的の物質が、上層にあるのか? それとも下層にあるのか? 考えながら実験を進めていきました。 |
今回の反応に関して
【予備実験】 〜 白い粉の正体を探れ 〜
今回、野口先生は事前に化学反応式を黒板に書かれていました。
無機 : HCl + NaOH → NaCl + H2O
有機 : C6H5ーCOOH + NaOH → C6H5ーCOONa + H2O
そして、野口先生は、次のことだけを生徒に情報として与えて下さいました。
野口先生:「有機化合物は一見すると複雑な形をしています。しかし、原理は無機化学と同じです。『酸』は『塩基』と反応して、水に溶ける『塩』と水ができます。これを化学基礎では中和として学んだはずですね。C6H5ーCOOH の名前は『安息香酸』と呼ばれる有機化合物の『酸』です。上記と同じように『水酸化ナトリウム』と反応して、C6H5ーCOONa『安息香酸ナトリウム』と呼ばれる『塩』ができます。」
ここで1本の試験管に白い粉が入ってることを気づかせた。
野口先生:「さて、今から机の上にある7種類の試薬を用いて、その白い粉が『安息香酸』なのか、それとも『安息香酸ナトリウム』なのか当てなさい。さぁ〜、手を動かしなさい。」
そして、生徒たちは戸惑いながら実験を始めていきました。
〔準備して頂いた指示薬〕
@ エタノール
A メタノール
B 水道水
C 6M 水酸化ナトリウム水溶液
D 3M 塩酸
E 飽和食塩水
F 塩化鉄(V)水溶液
【2ー1】酢酸エチルの合成
【2ー2】酢酸エチルの加水分解
【2ー3】油脂のけん化
今回のアフタースクールの講座名は、「大学の有機化学実験」となっております。しかしながら、できるだけ特殊な器具を用いないように、今までの経験に基づいて今井先生が研究して下さった実験法で、より教育効果が高い実験となっております。今井先生の目標としては、「どの高校でもできる有機化学実験」を目指して実験開発を行って頂いております。従って、大学で行うような長時間の実験や特殊な実験器具は、今井先生のアイデアと技術によって改善されております。
今回のアフタースクールでは、実際に実験技術が未熟な普通の高校生を対象に実施しています。
そして、誰でも有機化学実験を楽しめる実験となっております。
尚、本実験に関する詳細(使用した試薬や実験操作など)に関しては、このアフタースクールの大学側の統括責任者である 千葉科学大学 薬学部
薬学科 今井 信行 教授 にお尋ね下さい。
● | 今回の実験では、手順通りに進んでいたつもりでも、最初の操作の確認を怠ったことにより、思うような結果を得られることができませんでした。しかしながら、事前の準備の大切さや、1つ1つの操作の大切さを実感しました。また、今回の実験では前回の実験の復習内容も含まれていました。次回は野口先生が準備して下さった実験テキストを予習してきて成功できるようにしたいです。 |
【1組 女子 U.M.さん】 |
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● | たくさん失敗をしたけれど、失敗をする度にちゃんと自分なりに得るものが多くあった。「セッケンを作る」ことは思っていたよりも、ずっと簡単な作業で驚いた。今日の実験は野口先生の指示通りに実験を行っただけなので、次からはちゃんと理解して、何故そうなるのか。また、自分がやっている作業は、どのような意味があるのか考えながら実験をするようにしたいと思った。 |
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【1組 女子 K.S.さん】 |
● | 聞いたことのない有機化合物が出てきて最初は分からないと思っていたけれど、基本的に「水に溶けにくい有機化合物」と「水に溶けやすい塩」という知識さえあれば、簡単に「塩」なのか、それとも「塩でないのか」判別できる新たな理解ができて感動した。前回行った「綿栓ろ過」の方法も今回使うことができて、どんどんできることが増えていって嬉しかった。PH試験紙を用いた実験をあまりしてこなかったので、今回の実験を通して理解できたし、自分の手でサラダ油から作ったセッケンが泡立ち、PH試験紙が緑色(弱酸性)になって成功して、今までにやったことのない実験でとても貴重な体験ができたと思う。 |
【1組 女子 M.K.さん】 |
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● | 初めは何を作っているのか、どうしてそんな反応が起こっているのか理解できずにやっていたが、最終的に得られた物質が自分たちの身近なセッケンだったことに驚いた。次は、化学実験の内容にまで理解できるようになりたいと思った。 |
【2組 男子 T.A.くん】 |
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● | 有機溶媒・極性溶媒と有機物質・無機物質との相性の重要性を実感することができた。また、今まで漠然と「難しそうで、よく分からないな」と思っていた有機化学の分野に対して、今回の実験を通して良いイメージを持つことができた。 |
【3組 男子 S.T.くん】 |
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● | 実験の内容は面白かったのだが、途中で何を目的としてやっているのか、実験操作の理解について行けない時があった。次はテキストを読んできて何のために、そして、目的物質が何なのか明確にして実験に望みたいと思った。 |
【2組 男子 K.Y.くん】 |
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● | 野口先生が作られた実験の試料に目を通すのに時間がかかってしまい、時間内に終えることができなかったのが反省点です。有機化合物は水に溶けにくいということを理解することができました。 |
【8組 女子 H.S.さん】 |
@すごく長い Aやや長い Bちょうどよい Cやや短い Dすごく短い
@すごく難しい Aやや難しい Bちょうどよい Cやや易しい Dすごく易しい
@すごく難しい Aやや難しい Bちょうどよい Cやや易しい Dすごく易しい