アフタースクール 大学の有機化学実験

 1.  目 的  専門性が高い大学の教授から直接指導を仰ぐことで、幅広い教養と豊かな人間性、自ら考え解決するために必要な基本的知識と、建設的に行動できる態度と習慣を身に付ける。
 
 2.  実施日
(時間)
 2020年10月14日(木) 第1回目(全8回の実験を予定しています)
 @ 16時15分 〜 17時50分
 A 17時55分 〜 19時30分

 3.  講 師  千葉科学大学 薬学部 薬学科 今井 信行 教授 このアフタースクールの大学側の統括責任者
 千葉薬科大学 薬学部 薬学科 川島 裕也 助教(今井グループ)
 江戸川学園取手中・高等学校 医科コース長 兼 龍盛 このアフタースクールの高校側の企画・運営

 4.  会 場  江戸川学園取手中・高等学校 自然科学棟 化学室β

 5.  参加者  高等部2年生対象
  @24名(欠席者:2名)
  A27名(欠席者:2名)

 6.  実験内容  『血液鑑定で有名なルミノールの合成』 Synthesis of luminol by microwave

☆ 本来は、千葉科学大学の学長と本校の学校長および関係者が集まって調印式典を行う予定でした。今年度は、新型コロナウイルス感染症予防の観点から、残念ながら式典は行いませんでした。
☆ しかしながら、書面にて令和3年9月22日に千葉科学大学と江戸川学園取手中・高等学校は、教育提携に関する協定書に調印しました。

実験の予定 有機化学実験を体験@〜G(生徒の実験操作の技術や理解度を見極めて、実験内容を適宜変更していく予定です)

 回数  日付  担当講師  実験の題目(予定)  実験の内容(予定)  備考
 1
 10月14日

 今井 信行
 川島 裕也
 ルミノール反応 ルミノールを合成し、ルミノール反応で同定   極めて少量(mg単位)の試薬を用いる実験
 2
 10月21日

 野口 拓也  エステル化と加水分解  エステルの合成およびせっけんの合成  センター試験20,18,13年に類題が出題
 3
 10月28日

 野口 拓也  鎮痛剤と湿布薬  加水分解とエステル化の応用  センター試験18,14年に類題が出題
 4
 11月04日

 野口 拓也  電子レンジ@  実際の有機化学反応を体験@
アセトアミノフェンの合成とTLC
 センター試験19,15年に類題が出題
 5
 11月25日

 野口 拓也  電子レンジA  実際の有機化学反応を体験A
アセトアミノフェンの合成と分液による分離
 センター試験19,15年に類題が出題
 6
 12月02日

 川島 裕也  電子レンジB  実際の有機化学反応を体験B
アセトアミノフェンの合成と濃縮および単離精製
 センター試験19,15年に類題が出題
 7
 01月13日

 川島 裕也  電子レンジC  実際の有機化学反応を体験C
アセトアミノフェンの合成と濃縮および単離精製
 センター試験19,15年に類題が出題
 8
 01月27日

 今井 信行
 川島 裕也
 メチルオレンジの合成  アニリンからジアゾニウム塩の調整とジアゾ化  センター試験19,15年に類題が出題

1回目の実習は、有機化学実験に向けて、生徒の心をキャッチするルミノール反応、2〜3回目はカルボン酸・エステル関連、4〜7回目は含窒素化合物関連を配置しました。薄層クロマトは4回目に原理を説明します。そして6回目まで反応を追跡、生成物の同定の用途で使用します。今回用意したテーマのほとんどはセンター試験にも出題されており、実験を行い、関連するセンター試験の問題を解説することも可能です。


研修風景

         
 今回のアフタースクールの統括責任者である今井教授から講座の目的を話して頂きました。実験を通して、みんなで闊達に議論を深め合う重要性など強調して頂きました。    今井先生はアメリカのハーバード大学で2年間留学経験があります。ノーベル化学賞を受賞されたイライアス・コーリー博士の話など、とても興味深い話も伺うことができました。    今回は 3-Nitrophthalic hydrazide(MW=207)を約20mgという、普通の高校の実験レベルでは扱わない様な、微量な物質を用いたルミノールの合成実験を行いました。
         
         
 大学の方で作成して頂いた実験テキストを見ながら実験操作を進めていきます。本来の学生実験では、ヒートガンを用いて110〜130℃に加熱をするのですが、今回は電子レンジの電磁波を利用しました。    通常の吸引ろ過では、合成した目的化合物が少量なので採取することができません。そこで「綿栓ろ過」とう技術を用いてろ過しました。高価な装置を用いずに、身近な道具を利用することも教えて頂きました。    実験操作で上手くいかない時は、川島先生が丁寧に教えて下さいました。また、今回は今井研究室の大学院生である高荷先生が実験アシスタント・チューター役として参加して頂きました。疑問点はすぐに対応できる環境となっていました。

今回の反応に関して

3-ニトロフタル酸ヒドラジド( 3-Nitrophthalic hydrazide)を、水酸化ナトリウム水溶液に溶かし、亜ジチオン酸ナトリウム(Na2S2O4)を用いて還元しました。この操作によって、目的の化合物であるルミノールを得ました。この還元をする際に加熱をしたのですが、今回は電子レンジの電磁波を利用して短時間に加熱しました。
今回のアフタースクールでは、「大学の有機化学実験」となっております。しかしながら、できるだけ特殊な器具を用いないように、今までの経験に基づいて今井先生の方で研究して下さった実験法で、より教育効果が高い実験となっております。今井先生の方の目標としては、「どの高校でもできる有機化学実験」を目指して実験開発を行って頂いております。従って、大学で行うような長時間の実験や特殊な実験器具は、今井先生のアイデアと技術によって改善されております。
今回のアフタースクールでは、実際に実験技術が未熟な普通の高校生を対象に実施しています。
誰でも有機化学実験を楽しめる実験となっております。
尚、本実験に関する詳細に関しては、このアフタースクールの大学側の統括責任者である 千葉科学大学 薬学部 薬学科 今井 信行 教授 にお尋ね下さい。


感想

  今回の実験では、「触媒」についての質問が最後にありました。そして、定説ではヘキサシアノ鉄(V)酸カリウムが触媒として作用しているらしいけど、川島先生の実験では、それが疑わしい実験を紹介して下さいました。未だに分からないことがあることを教えてくれました。実験操作は難しくなかったけれど、入れる溶液を間違えそうになることもあった。しかし、加える試薬には色のシールで区別されており、間違えることはなかった。自分で作った物質が青白く光ったときは嬉しかった。

 ●   まだ有機化学を勉強していないので、反応の仕組みは分からなかった。しかし、少量の物質にいろいろな試薬を混ぜて、電子レンジに入れて加熱することで目的としていた物質ができあがったことに感動した。化学発光の仕組みなど分かりやすく教えて頂き面白かった。
 
 
 ●   カラーで印刷された実験テキストが分かりやすかった。試薬が英語で記載されているなど、高校の実験とは違って高度な実験をやっているようで面白かった。川島先生や大学院生の先生が気さくに教えて下さったので、楽しかった。最後に、教室を暗くして触媒を加えたときに光ったとき感動した。