アフタースクール

海辺の生物体験 中1年生対象

湾岸生物教育センター(館山臨海実験所)の海の様子

 目 的  :  21世紀における科学技術人材育成の中で、我々人類も含め、生命の本質を理解するためには、様々な生き物の生態について正しく理解することが大切です。今回、海辺の実際の生命現象を様々な視点から実験・観察することを通して、生命の本質を探るための探究心を養うことを目的に「海辺の生物体験」を実施することになりました。このプログラムは、お茶の水女子大学と提携したもので、主に礒の生物の採取と観察をして、採取された生物の種の同定を行います。

 場 所  :  お茶の水女子大学 湾岸生物教育センター(館山臨海実験所)
〒294-0301
千葉県館山市香11

 日 程  :  2019年6月29日(土曜日) 〜 30日(日曜日)

 参加生徒  :  24名
 引率教諭  :  中等部3年2組(医科ジュニアコース) 担任 熊井 優
 高等部1学年 医科コース      副担任 名村 渉

6月29日(土曜日)

 8:30    学校集合 (華美にならず、実験のしやすい服装)
 9:00    学校出発 (バス中型27人乗り)
 11:45    現地到着予定 (バス内での昼食)
 12:30    開講式及び実験ガイダンス
 14:00    研究所で飼育されている動物の観察
 18:00    夕食
 19:00    ウミホタルの採種・観察
 22:00    入浴・就寝

6月30日(日曜日)

8:10  朝食
9:00  磯採集
10:30  磯採集してきた動物の同定(スケッチ)
11:30  閉講式
12:00  昼食
13:30  現地出発(バス中型27人乗り)
16:45  学校到着


6月29日(土曜日)

         
 研究所に併設されている宿泊施設に到着しました。この新しい建物には男子が宿泊しました。そして、女子は別の建物になりました。    宿泊施設に到着後昼食を食べました。しっかりと食事と休息を取り、午後の講義と観察に向けて元気いっぱいです。    研究所では清本先生から、研究所内での生活面や震災時における諸注意を受けました。そこで万が一の場合の避難経路の確認も行いました。
         
         
 カイメン(これも動物です)を手渡されて感触を確かめています。
想像と違う感触で盛り上がりました。
   研究所で飼育している生物を分類ごとに観察し、写真やスケッチで特徴を記録しました。    次々と新しい生物を持ってきていただき、参加した生徒達も興味津々でした。
         
         
 図鑑を見ながら生物の同定を行いました。講義で教えていただいたことを踏まえながら特徴ごとに種名を同定していきます。    マダラウミウシ?(Dendrodoris guttata
ウミウシの仲間にはカラフルなものが多く同定が難しいそうです。
   本格的なスケッチの描き方も学び、特徴や気づいたことと一緒にまとめていきます。
         
         
 納得のいくまで何度も持参したノートに書き直しをしました。それぞれが真剣に生物と向き合って観察できました。    ミスガイ(Hydatina physis
研究室で飼育されていたものを観察させていただきました。今回の磯では残念ながら採集することができませんでした。
   研究室で飼育されていたカエルアンコウ( Antennarius striatus )です。とてもかわいい姿で生徒も写真を撮っていました。
         
         
 実際に触ってみることで固さや手触りなど写真からは分からない様々な情報を得ることができたようです。    夕食の準備も生徒達で協力して行いました。このような経験もこの合宿では重要なものになります。そして、この日は少し肌寒かったので、温かいお茶を飲む生徒もいました。    全員の準備が終わり、みんなで夕食を取りました。とてもおいしいハンバーグ弁当でみんな大満足の様子です。
         
 夕食後は雨も上がり、ウミホタルの採集を行う事ができました。その後は研究室に戻り、体の構造を細部まで実体顕微鏡を用いて観察しました。    採集を行った時期のウミホタルの中には卵を持つ雌もいるそうで、みんな頑張って探していました。    捕まえてきたウミホタルを入れた海水に、微弱な電流を流して刺激を与えた様子です。幻想的な青白い光が放たれた時に、みんなから歓声が上がりました。


ヒラムシの動きの様子

研究所前の海の様子(今回は残念ながら快晴でなく、風も強い日でした)

6月30日(日曜日)

         
 翌日も朝には雨が止み、磯に生物採集に行くことができました。軍手とマリンシューズを身につけ準備万端です。    この日は風が強く、足場も不安定なため、足元に注意して歩く必要があります。    吉田先生から磯の危険生物や採集についての注意がありました。「命」を扱うため乱暴に採取しないことを約束しました。
         
         
 班ごとに分かれて磯採集スタート!
こらからどんな生物が見つかるかドキドキわくわくです。
   生物は石の下や岩の隙間に上手に身を潜めています。先生方のご指導のもと、班で協力して生物を採集しました。    はじめに採集していた場所から少し移動し、吉田先生に教えていただきながら岩場付近にいるカイメンやイソギンチャクを探しました。
         
         
 人工的な建造物にも様々な生き物が適応し、たくましく生きていることを学びました。    海水に浸かっている時間の違いで付着している生物の種類が違うという説明を聞き、生物と環境の関わりについて理解を深めました。    磯から帰り、お借りした道具をきちんと返却。
そして軍手やマリンシューズをしっかりと洗いました。
         
         
 図鑑と格闘しながら生物の種類を同定しています。先生にもアドバイスをいただきながら進めることができました。    調べて終わりにすることなく、しっかりと特徴をまとめてスケッチをしています。ヤドカリの同定は苦戦していました。    生徒が見つけたムラサキクルマナマコの体表面から骨片を採取しています。
この骨片にはある秘密が・・・
         
         
 先ほどの骨片を研究所の高価な顕微鏡で拡大してみると・・・
(生徒からも驚きの声が上がっています。)
   クルマの車輪のような形をしていました!
これが由来となりクルマナマコとなったそうです。生物の名前にもきちんと意味があることを学びました。
   最後に、黒板にこの日生徒が採集した生物を全て書き出しました。そして吉田先生が生物種ごとの特徴のおさらいをしてくださり。2日間のまとめを行いました。
         
 無事に観察の日程が終わり昼食をとりました。仲間達と今回学んだことや思い出を語り合っていました。    普段はクラスが異なり、関わりの少なかった生徒とも仲良くなることができたようです。新たな人間関係を作れたことは大きな成長です。    帰りのバスに乗車中です。実習が楽しかったせいか帰る背中が少し寂しげですが、学んだ事を学校生活にも活かして欲しいです!


イソアワモチの動きの様子

参加した生徒の感想

 ●  僕はこの海辺の生物体験に参加して改めて「海の生物の研究者になりたい」と思いました。
なぜなら海辺の生物体験に参加したことで今までより海の生物について関心を持つようになったからです。
1日目の実験ガイダンスと水槽の動物の観察ではクモヒトデやウミウシを触りながらスケッチをしたり、カエルアンコウやハオコゼなどの珍しい動物を見たりすることができました。また、ウミホタルの採集・観察ではウミホタルの光る理由や採取方法などを教わりました。そして、次の日の磯採集は岩の間にいるウミウシや影に隠れている毛深ガニなどを捕まえました。このような体験をして「海の生物って色んな種類があるのだな。」とも思いました。
そして、これからは海辺の生物体験を無駄にしないようにもっともっと海の生物について調べて、海の生物の研究者という将来の夢が叶うように、ふつうの勉強と海の生物の勉強を両立して出来るようにしたいです。
     
 ●    僕は生物が大好きです。小学校の時は夏休みの宿題で「バッタが好きな植物は何か」「カブトムシの好物は何か」そして「カブトムシを長生きさせるにはどうしたら良いか」という研究を行いました。特に「カブトムシ」の研究は五年生と六年生の二年にわたる研究で、ベネッセ夏のチャレンジ・自由研究部門で優秀賞をいただきました。この時賞をいただいた以上にうれしかったのは、僕に捕まり僕の研究のために生きて死んでいったカブトムシ達に恩返しができたことでした。
今回の「海辺の生物体験」で先生は最初に「生物の分類」と「どんなに小さくてみにくい生き物でも命がある」ということをお話してくれました。その時僕は、小学校の研究で観察したカブトムシのことを思い出しました。先生のお話をお聞きするまでは、海辺に行ったらたくさんの生物を捕まえることばかり考えていましたが、カブトムシや僕たち人間と同じ様に海辺の生き物にも命があり、それぞれの命を大切にしなければならないことに気が付きました。そこで「生き物を無理やり取ったり、触ったりしない」「命を大切にする」ということを心に決めて、海辺に生き物を捕まえに行くことにしました。
実際に海辺に行ってみると、僕たちに捕まるまいとして、小さい魚やカニが狭い隙間に入り込んで身を隠そうとするところを数多く見ました。僕はこの時、必死に生きている生物の命の尊さを実感しました。そして捕まえた生き物を研究室で観察する際にも、しつこく触ったりして傷つけない様に心がけていました。
今回僕は「海辺の生物体験」に参加することで、僕の大好きな昆虫ばかりではなく、カニやウニ、そして小魚たちも生きるために必死に生活していることを知りました。
僕は、将来「世界のどこでも活躍できる外科医になる」ことが夢です。外科医は「命の尊さ」を理解していないとできない職業だと思いますので、今回の「海辺の生物体験」への参加は僕にとって有意義な体験であったと思います。
     
 ●    今回、海辺の実際の生命現象を様々な視点から実験や観察をすることでたくさんのことを学ぶことができました。まずはじめに清本先生による海の動物に
ついての講義がありました。この講義をお聞きして私が学んだことは、その生物がその体の構造をしているのにはすべてしっかりとした理由があるということです。例えば、マキガイは口の上に肛門があるという変な形をしていますが、人間のように口の反対に肛門があると、貝の中は行き止まりになっているので不要物が排出できないという問題がおきてしまうからでした。このような生物の構造には理由があることが分かり、このことをこれからの生活にも活かして何事にも疑問を持ち自分の糧となる知識を深めていきたいと思いました。
夜にはウミホタルの採取を行いました。私は今回実物を初めて見たので、生物が青く輝いていることにとても驚きました。そしてきれいに青く光るウミホタルたちを見てとても感動しました。特に実験室でウミホタルたちに電気を流すなどの刺激をあたえ、一斉にきれいに輝く様子は今でもはっきりと覚えています。ウミホタルは、ウミホタル自身は光っていると思っていたけれど、ウミホタルに刺激をあたえた時にでる青い液体が光っていたということを先生にお聞きして初めて知りました。顕微鏡で観察をしたときは心臓の動きや無数の卵も観察することができました。
私が一日目に清本先生の講義をお聞きして、とても楽しみにしていた二日目の磯採集では強風というあいにくの天気でしたが、自分で岩をどかしたり一生懸命目を凝らして動物が採集できたときは、とてもうれかったし感動しました。さわったりした生物の数はおよそ三十種です。見た目は硬そうだけどやわらかかったりと、実際にさわらなかったらわからなかった体験がこの二日間にできて本当によかったです。そして、このような企画を考えてくれている江戸取の先生方や、私を送りだしてくれた家族にとても感謝したいです。この海辺の生物体験は驚きと感動がたくさんつまった充実した二日間になりました。
     
 ●    僕が海辺の生物体験に行って見て学んだことは、まず、たくさんの生き物の分類です。その中でも、一日目の開講式及び実験ガイダンスでは門と鋼を中心に行い、それによって動物は細かなところでも分けられているということがわかりかした。また、その門や鋼の名称で、その生物にどのような特徴があるのかわかりました。
二つ目は、生物のスケッチの仕方です。今回の海辺の生物体験では、生物のスケッチが多くありました。僕はあまりスケッチをしたことがありませんでしたが、今回の体験でどのようなことに注意し、また、どのような状態の鉛筆を使えばいいのかよくわかりました。技術なのでよい練習になり、また、動く生物をスケッチできたことで少し自信がもてました。
三つ目は、ウミホタルの採取、観察です。ウミホタルはとても興味があったのでネットなどで調べてみました。そしたら、後で見返してみると先生のおっしゃっていたことの方がより正確で、また、ネットに書いてあったこととはまったく逆のこともありました。このけいことから、ネットの情報は曖昧で、正確な情報を簡単に手に取ることはできなくて、専門家などに聞ければ正しい情報をよりわかりやすく手の取ることができるということがわかり、海辺の生物体験に行けたことの幸せさが良くわかりました。だから、これからもたくさんのえどとりの有志のイベントには積極的に参加していきたいです。
四つ目は、磯採集・磯採取です。磯にはなかなか行ったことがなかったので、どのような生物がいるのかとても気になりました。実際、ウニやハゼ、カニが多くいました。それらのスケッチをして、また名前を調べて思ったことは、僕はいつもウニであったらウニ、カニであったらカニと呼んでいましたが、それらには名称がありひとくくりにウニやカニと言えないことがわかりました。
今回の海辺の生物体験で、仲間たちと協力して磯採集・磯採取などに楽しく取り組んだことでたくさんの人たちと友達になれました。これからも今回の海辺の生物体験で学んだことを活かして生活していきたいと思いました。
     
 ●    私は6月29日と30日の館山市にあるお茶の水女子大学湾岸生物教育センター臨界実験所へ海辺の生物体験をしに行きました。
一日目は清本正人先生の講義「磯の動物」を聞いた後、研究所で飼育されている水槽の動物の観察をしました。講義では分類の階級や食性、系統別の動物の特徴などについて聞きました。分類の階級を分ける時、ボディプランが既存の動物と似ていれば同じグループに入り、似ているものがなければ新種になると初めて知りました。他にも色々な生物を系統ごとに詳しく教えていただき、とてもタメになりました。講義の後は水槽で飼われている生き物たちの観察をしました。ウメボシイソギンチャクやウミウシ、スカシカシパン、イトマキヒトデ、マナマコなど、色々な生物を見たり触ったり、調べたりスケッチしたりしました。可愛い見た目のものや肝が座っているものなど、見ていて凄くおもしろかったです。
夜はウミホタルの採集に行きました。エサを容器に入れた状態で10分程度海に放っておいたらたくさん採れて咆驚しました。出した体液が青白く光っているところは神秘的でとても美しかったです。研究所に戻ってからウミホタルに電流を流した時の様子も凄くきれいだなと思いました。双眼立体顕微鏡で見てみるとなんだかミジンコに似ているなと思いました。卵を抱えていたメスも見て、顕微鏡で見てこんなに小さいのだから実物はどれくらいなのだろうという疑問を感じました。
二日目は少し風が強かったけれど、海へ行って磯採集をしました。ムラサキウニやウミウシ、色々な種類のカニなどを採集することができて嬉しかったです。研究所で種類を調べる時、一日目に用意されていたものを調べた時よりなんだかわくわくしました。カニが二回程脱走して大変だったけれどかわいいなぁと思いました。説明をきいて昼食を食べて集合写真を撮って帰りました。
今回の海辺の生物体験では水生生物について多く学ぶことができてとても有意義にすごせたと思います。また、今回のことを通して仲良くなれた子も居たので、行くことができて本当に良かったと思います。学んだことを日常でも使うことがあれば良いなぁと感じました。また来年も参加したいです。

引率した教員の感想

 今回は中等部1年生の海辺の生物体験ということで、生物の分類についての講義や磯での生物採集と種類の同定、ウミホタルの採集と観察を行いました。生物の分類の講義では高校生物の範囲を超えて大学並みの部分もありましたが、清本先生の説明を一言一句逃すまいと集中して講義を聴き、知識を自分のものにしようとメモを取る生徒達の姿が印象的でした。今回のような自ら進んで学ぼうとする姿勢は今後の学校生活だけでなく、社会人となってからも求められるものになります。今回の経験を活かして大きく成長して欲しいと思います。また、生物に直接触れて観察をするということは生き物に対する思いやりが無ければできません。生徒達もはじめは強く触ってしまったりしていましたが、観察を通して次第に配慮ある触り方ができるようになっていきました。生徒達の感想文の中からも、他者への思いやりや「命」の尊さを感じてくれている様子が分かり、本当にたくさんの大事なことを学んでくれているなと思い感動しました。実習以外の時間でも友人と協力して食事の配膳をしたり、時間を守り行動することを通し、集団で生活する上で大切なことを学んでくれたようです。今回の体験学習は生徒の主体性や社会性を育てるという点においてとても有意義なものになったと感じております。このような体験学習ができているのも清本先生、吉田先生をはじめとするお茶の水女子大湾岸生物教育研究センターの方々のご協力のおかげであると思います。最後に保護者の方におかれましては、今回の体験学習へのご理解とご協力を頂き有り難うございました。2日間の体験学習を通して教室の中にいるだけでは学べない貴重な経験を得ることができたと思います。

高等部1学年 医科コース 副担任 名村 渉(高等部 生物・物理 担当)