アフタースクール

海辺の生物体験 中2年生対象

湾岸生物教育センター(館山臨海実験所)の海の様子

 目 的  :  21世紀における科学技術人材育成の中で、我々人類も含め、生命の本質を理解するためには、様々な生き物の生態について正しく理解することが大切です。今回、海辺の実際の生命現象を様々な視点から実験・観察することを通して、生命の本質を探るための探究心を養うことを目的に「海辺の生物体験」を実施することになりました。このプログラムは、お茶の水女子大学と提携したもので、主に礒の生物の採取と観察をして、採取された生物の種の同定を行います。

 場 所  :  お茶の水女子大学 湾岸生物教育センター(館山臨海実験所)
〒294-0301
千葉県館山市香11

 日 程  :  2019年5月11日(土曜日) 〜 12日(日曜日)

 参加生徒  :  18名
 引率教諭  :  医科コース長  兼 龍盛
 専門:化学

5月12日(土曜日)

 8:30    学校集合 (華美にならず、実験のしやすい服装)
 9:00    学校出発 (バス中型27人乗り)
 11:45    現地到着予定 (バス内での昼食)
 12:00    開講式及び実験ガイダンス
 13:00    礒での生物採取 (館山の干潮時間 15:11 潮位42cm)    → 【 ビデオ1 】
 16:00    生物の生態や分類などについて(種の同定)               → 【 ビデオ2 】
 18:00    夕食
 19:00    講義 海の動物 (基幹研究院自然科学系 准教授 清本正人 先生)
 ウミホタルの採取 ← 先生のご厚意によって当初予定を変更致しました → 【 ビデオ3 】
 22:00    入浴・就寝

5月13日(日曜日)

8:10  朝食
9:00  ナメクジウオとウミホタルのスケッチ
 研究所で準備して頂いた館山で見られる生物の観察             → 【 ビデオ4 】
11:30  閉講式
12:00  昼食
13:30  現地出発(バス中型27人乗り)
15:45  学校到着

湾岸生物教育センター(館山臨海実験所)の前の海で取れた貝殻(タカラガイなど)

5月11日(土曜日)

         
 バス内の様子です。参加生徒は全員しっかりと集合ができたので早めの出発ができました。みんなは非常に楽しそうでした。    研究所につくと清本先生から、研究所内での生活面や震災時における諸注意を受けました。避難経路の確認も行いました。    天気も良かったので、みんなで研究所前の礒まで歩いていきました。手には採取用の道具を入れたバケツを持っています。
         
         
 今回は吉田先生から礒での観察時における諸注意を受けました。危険な生物など採取してはいけないものを教えて頂きました。    生物採取の仕方など詳細に教えて頂きました。何よりも海辺の生物を採取するので乱獲などしないように「命」を大切にすることを学びました。    いろいろ不思議な生物が採取できました。時には大きなナマコやアメフラシがいました。はじめは目が慣れていなかったので生物が見つかりませんでしたが、時間経過と共に採取できた種類と数が増えてきました。
         
         
 採取した生物をバケツや小さな容器に小分けにして研究所まで持ってきました。先ずは軍手を洗浄し、濡れた足を乾かしました。    いよいよ採取してきた生物の種の同定が始まります。よく見ると色々な違いが分かります。研究所の図鑑をお借りして調べていきました。    どうしても分からない場合は、専門の先生に質問しました。時には先生たちも図鑑を見て同定していきました。
         
         
 夕食はお弁当を頂きました。ハンバーグのお弁当でした。配膳の準備や片付けは、みんなで協力して行いました。これも大切な勉強です。    夕食後は清本先生のご厚意によってウミホタルの採取に行くことになりました。今年度最初の採取なので上手く取れるのか不安でした。    非常に小さなウミホタルが採取できました。小さいのですが、非常に綺麗な青い発光現象が見られました。その度に歓声が上がりました。
         
         
 研究所に戻ると清本先生から動物の体のしくみについて学びました。研究所にある顕微鏡を用いて拡大してみんなで観察しました。    そして、ウミグモについても教えて下さいました。8本の足があるのですが、胴に当たる部分が非常に小さく陸上の生物とは異なっていました。    強い光を当てると、そこから逃げるように動き出しました。「負の光走性」について教えて頂きました。その後、電気的な刺激を与えることで青白い発光現象を観察しました。


研究所の付近に咲いていた花

     
 トベラ(Pittosporum tobira Ait)
   スイカズラ(Lonicera japonica Thumb.)


5月12日(日曜日)

         
 研究所前の海岸の様子です。朝日を背にして写真を撮りました。5時03分が干潮でした。    朝食は館山で有名なパン屋さんのタマゴサンドウィッチとクリームパンでした。非常に美味しく頂きました。    研究所では脊索動物門の頭索動物亜門に属する「ナメクジウオ」と、尾索動物亜門に属する「ホヤ」について学びました。
         
         
 清本先生が研究所で飼育されている「ナメクジウオ」を観察させて頂きました。高等部の生物の教科書には写真があるものの実物を見るのは貴重な体験でした。    顕微鏡を用いて「ナメクジウオ」と昨晩採取した「ウミホタル」の観察を行い、スケッチとして記録しました。デジタル写真では気づかない構造など、スケッチを通して理解できることが多くありました。    最後はみんなで整列し、バスに乗って学校まで行きました。バスの中では疲労もあって、みんな寝ていました。2日間という時間でしたが、内容は非常に多岐に渡り様々な海の生物について学ぶことができました。

東京都とお茶の水女子大湾岸生物教育研究センターの吉田隆太特任助教らが、小笠原諸島・聟島列島の周辺海域で新種のカニを発見したと発表した記事。
【日本経済新聞 2018年1月22日】
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25972590S8A120C1CR0000/

     
     
     
 生徒のスケッチ(一部)    ナメクジウオ
Branchiostoma japonicum
 ( 兼が撮影 )

5月11日(土曜日) 礒での生物採取 【ビデオ1】

5月11日(土曜日) 生物の生態や分類などについて(種の同定) 【ビデオ2】

5月11日(土曜日) ウミホタルの採取 【ビデオ3】

5月12日(日曜日) ナメクジウオとウミホタルのスケッチ・研究所で準備して頂いた館山で見られる生物の観察 【ビデオ4】

参加した生徒の感想

 ●  今回海辺の生物体験に参加して、初めてのことが多く、とても良い経験になりました。又、実際に礒で生き物を採集し、先生方の講義を通じて生物の多様性や進化について深く学ぶことが出来ました。その中でも、ウミホタルの採集が特に印象に残りました。自分たちで採集したウミホタルの発光実験では、青白く光る美しいウミホタルを見せて頂きました。美しさの中に命の尊さを感じることができました。最終日にはそのウミホタルの顕微鏡で観察し、スケッチをしました。ウミホタルは肉食で、危険を感じると自らの体液で発光することが分かりました。このような様々な経験をさせていただき、改めて恵まれた環境の中にいると感じました。この気持ちを忘れず、夢に近づく大切な一歩にしたいです。
     
 ●  海辺の体験学習に参加して、自分一人では調べることのできない沢山の種類の生物を間近で見ることができました。また、まだ学習していなかった生物の細かい分類を知ることができ、その分類を最初に考えた人はとてもよく生物の体のつくりを理解しているのだと思いました。ウミホタル採集の後、なぜ光るのか、人工的に光らせる電気的な刺激による方法を知り、甲殻類にとても興味を持ちました。カニやウミホタルなどの甲殻類には思っていたより寄生虫がいる個体が多く、どのようにして寄生するのか調べたいと思いました。
     
 ●  去年に続き、海辺の生物体験に参加して、とても良い経験になりました。今回は実際に礒で生き物を採集し、先生方の講義を通じて生物の多様性や進化について深く学ぶことが出来ました。僕が印象に残ったのはウミホタルの生物発光でした。光エネルギーを発することの不思議もそうですが、その光の美しさにとても驚きました。こうして生物について理解を深めることで他の動物や植物についての興味も膨らむと思うので、来年も参加したいです。僕は去年の文化祭で、「海の豊かさを守る」というテーマで、海の問題などを調べましたが、実際に海の生物を見て、美しいこの海を、そして、自然を守るという気持ちも強まりました。ありがとうございました。
     
 ●  海辺の体験学習に参加した感想を書きます。
まず、実験にうまく成功し、嬉しかったです。僕はスケッチを描くのが苦手ですが、今回は内臓までくっきりと見えていたのでスケッチをしやすかったです。魚を空気が入らないようにケースの中に入れるときに全く空気が入らなかったので見やすかったのだと思います。ただ、海の中で周りの色と同化している生物を見つけるのが非常に大変でした。その生物の色やよく隠れている場所をもっと調べればよかったと思いました。来年はウニの生態についてなのでまた参加したいです。そして、理科の試験範囲で生物のことが出てきたら、この「海の生物体験」で得られた知識として、しっかりと答えられるようにしたいです。参加出来て本当によかったです。ありがとうございました。
     
   海辺の生物体験に参加して、海辺の生物についてとても興味が深まりました。私は比較的海に近い船橋市に住んでいて、もちろん海にも行ったことがあります。しかし、今回の学習を通して、意外にも身近な場所にとても多くの種類の生物が生息しているのだと実感しました。今、地球規模で問題になっている海洋プラスチック問題が深刻であるということをよく耳にしていましたが、海の沿岸でさえこれだけ多くの生物が生息しているということを考えると、地球の将来が心配になってきます。今回の海辺の生物体験に参加することによって、海の様々なことについて学ぶことが出来ました。是非、来年も参加させていただきたいと強く思いました。
     
 ●    中1の時は不参加だったのですが、今回参加して普段あまり親しみの無い海について知ることができました。「ヤドカリ」などは家族旅行などで見られることはありましたが「アメフラシ」や「ナマコ」、「クモヒトデ」などは見たことがほとんどなく、今回の演習を通して見られてよかったです。他に驚いたことは、館山の夜は早いということです。私の普通では、街灯やお店の明かりが夜遅くまでついていて外に出ても暗いと感じません。ですが、午後7時頃に「ウミホタル」の採取に行く為に研究所の外に出たら、すごく暗くて近所の家々の電気も消えていてとても静かでした。その土地ごとの違いを感じました。今回行ってみてすごく楽しかったです!
     
 ●    僕は、海辺生物体験に行って学んだことがあります。それは、海には、たくさんの豊富な種類の生物がいるということです。また、生物の分け方などのことも学びました。海の生物の命はとても貴重なものです。しかし、今、世界では、地球温暖化や工場などからの廃棄物による大気汚染、水質汚染などの問題によって海の生物は危険にさらされています。それは、人間が、少しずつ改善していかなければなりません。僕たちひとりひとりでできることは、少ないですが、それでもできることを積極的に行動していかなければならないと思いました。
     
 ●    僕は、今回のお茶の水の海辺の生物体験に行って、学んで分かったことがあります。それは、はかない小さな生物の命の大切さと必死に生きようとしている姿です。僕は、このような生物に触れ合うことが、大好きです。このような貴重な体験を僕は、大切にして、将来に活かしていきたいと思います。また、命の大切さに対する理解を深めて、自分の将来の夢である、医者への道を切り開いていきたいです。将来大学の医学部に行くにはたくさんの貴重な体験が、とても大事になってくると思うので、頑張っていきたいです。

引率した教員の感想

 清本先生とこの「海辺の生物体験」を実施することになって早4年目になりました。1年目は「ウニの受精卵の観察」だけでした。一つの受精卵が時間経過と共に分裂を繰り返し、やがては原腸胚、プリズム幼生となって動き出すことを顕微鏡を用いて観察する経験を通して、私は「いのちの不思議さ」だけでなく、「いのちの尊さ」を体験させて頂きました。この素晴らしい生きた経験を本校の生徒たちにも、是非とも体験させたいという気持ちで、協議を重ねて少しずつ内容を深めてきました。中等部1年生・2年生は参加希望者が多く、抽選をしなければならない結果となっています。そのため、同じ内容で「礒の生物観察」を行うようにしています。観察場所は、今回のように研究所の前の礒と沖ノ島の礒の2ヶ所があります。潮の関係や生物の種類など考慮して専門家の清本先生と場所を選定しています。そのため毎回多くの種類の動物を採取することができ、専門家の指導のもと、採取された動物の種の同定を研究所で行っています。中等部3年生は、「ウニの発生」、高等部1年生は「海藻の色素分離」、高等部2年生は「ヒトデの減数分裂」と学年が進行すると同時に内容を深められる様に、本校独自の教育内容に則した企画がなんとかできあがりつつあります。そして、中等部1・2年生の生徒たちには、採取してきた動物をスケッチさせることで、その生物の特徴や種の差異に気づかせることを目的として取り入れています。近年はデジタル写真での撮影記録が容易になっています。しかし、自分の目で確認しながら、生物の個体の構造の詳細を理解しながらスケッチさせることを、清本先生にお願いしてこの企画では行っています。そして、何よりも専門家からの講義はその内容の深さに毎回感銘を受けます。私はこの企画立案者として何度も引率をさせて頂いているのですが、毎回新しい話題と発見があり、忘れられないほどの感動を頂きます。また、清本先生は、難解な専門用語はできるだけ少なく、参加した生徒たちに配慮しつつも、専門家としての正確な内容になるように科学者としての立場を明確に持って、本校の生徒に対峙して話をして下さいます。その内容は中等部生にとってはやや難解であるにもかかわらず、一生懸命に自分のものにしようとする生徒たちの姿勢が見られます。それが普段の授業に活かされればと思い、いつも引率をさせて頂いています。食事の配膳や使用した顕微鏡の清掃、部屋の清掃活動もこの企画には必要不可欠な体験です。そして、この素晴らしい研究所で勉強させて頂いているという謙虚な心を忘れず、日々の大切な授業に活かして欲しいと願っています。最後に保護者の皆様におかれましては、今回の体験学習への理解と参加への協力をして頂き有り難うございました。学校を離れた2日間の体験学習の中で生徒たちは教室では学べない貴重な機会を得ることができたと思います。

医科コース長 兼 龍盛(高等部 化学 担当)