目 的 | : | 21世紀における科学技術人材育成の中で、我々人類も含め、生命の本質を理解するためには、様々な生き物の生態について正しく理解することが大切です。今回、海辺の実際の生命現象を様々な視点から実験・観察することを通して、生命の本質についての探究心を養うことを目的に「海辺の生物体験」を実施することになりました。このプログラムは、お茶の水女子大学と提携したもので、主にヒトデを用いた減数分裂の観察を行いました。 |
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場 所 | : | お茶の水女子大学 湾岸生物教育センター(館山臨海実験所) 〒294-0301 千葉県館山市香11 |
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日 程 | : | 平成30年10月13日(土曜日) 〜 14日(日曜日) |
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参加生徒 | : | 18名 |
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引率教諭 | : | 医科コース長 兼 龍盛 |
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指導講師 | : | お茶の水女子大学 基幹研究院 自然科学系 准教授 清本 正人 |
ウニガラ
(五放射相称であることが良くわかります)
11:00 | JR館山駅(東口)集合 | |
12:00 | 昼食 | |
12:30 | 開講式 及び 実験ガイダンス | |
13:00 | ヒトデを用いた減数分裂の観察 @ | |
18:00 | 夕食 | |
19:00 | 講義 細胞の分裂 (基幹研究院自然科学系 准教授 清本正人 先生) ウミホタルの採取 ← 先生のご厚意によって予定の講義内容を変更致しました |
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22:00 | 入浴・就寝 |
8:00 | 朝食 | |
9:00 | ヒトデを用いた減数分裂の観察 A | |
11:30 | 閉講式 | |
12:00 | 昼食 | |
12:30 | 現地解散 |
稚ヒトデの骨格
(偏光を用いての顕微鏡観察の様子)
JR館山駅の東口の様子です。今回は高等部2年生ということもあり、自分たちで路線図や時刻表を調べて集合することにしました。 | お茶の水女子大学湾岸生物教育センター(館山臨海実験所)のセンター長である 清本 正人 先生からお話しがありました。 | 今回TAとして東京学芸大学の平先生から「ヒトデ卵母細胞の減数分裂」の講義がありました。 | ||
今回の実験材料は、イトマキヒトデ【Patiria pectinifera】でした。 棘皮動物門ヒトデ網イトマキヒトデ科 |
雌のヒトデから採取した卵巣の様子です。一つひとつの房の中に未成熟な卵がたくさんあるそうです。 | 雄のヒトデから採取した精子です。精子は海水中では弱ってしまうのでドライスパムの状態で採取しました。 | ||
今回は高等部2年生を対象にした「海辺の生物体験」でした。今回参加した生徒の多くは物理選択者だったので顕微鏡の使い方から学びました。 | こまかな作業など分からない点があれば、TAである平先生からも指導を仰ぐことができました。先ずは、未成熟卵にホルモン(1-メチルアデニン)を作用させて成熟卵にします。 | 未成熟な卵母細胞(未成熟卵)です。1-メチルアデニンを加えた海水を加えると放卵が始まりました。内部の卵核胞と周囲の濾胞細胞も明瞭に観察できました。 | ||
卵核胞が少しずつ薄くなってきました。これにより熟成卵になっていく様子を観察しました。その後、精子(ドライスパム)を海水で希釈して受精させました。すると、受精膜が形成していくことが観察されました。 | 1-メチルアデニン処理をしてから約60分後に減数分裂によって、大きな卵と小さな極体に分かれました(上の小さなものが第一極体です)。卵割とは違い、分裂後の細胞の大きさに著しい違いがあることが分かりました。 | 第一極体を拡大したところです。半径比は約20倍にもなっていることが分かりました。従って、体積比は約8,000倍となることが分かりました。 | ||
約2時間経過すると第二極体の形成が観察されました。(写真の右下)第二極体は第一極体の下から現れました。 | 第二極体を拡大したところです。第二極大の大きさは、第一極体とほぼお同じ大きさでした。 | 清本先生の指導を仰ぎながら、ヒトデを解剖しました。ここではヒトデの放射神経を取り出すことを目的としました。 | ||
ヒトデの放射神経を取り出している様子です。ピンセットを用いて管足の周辺を探すと、繊維状の放射神経を見つけることができました。 | 一人ずつ放射神経を取り出す作業を行いました。非常に細かい作業でした。その後、蒸留水を用いて放射神経内の物質を抽出しました。(海水でなく、蒸留水を用いた理由は浸透圧を利用するため) | 放射神経から取り出した抽出液を、清本先生の指示通りマイクロピペットとマイクロプレートを用いて希釈していきました。希釈は×3,×9,×27,×81,×243の5種類と対照実験用の1つを観察しました。 | ||
夕食の様子です。配膳などは生徒みんなで行いました。約5時間連続の実験でしたが、疲れも見せず次の実験を行いました。 | 2細胞期の胚です。減数分裂の時とは大きく異なり、分裂後の2つの細胞の大きさに違いはありませんでした。もとの受精卵の2分の1の大きさになっていました。 | 4細胞期の胚です。細胞分裂後の4つの細胞の大きさに違いはありませんでした。もとの受精卵の4分の1の大きさになっていました。 | ||
8細胞期の胚です。細胞分裂の時期はすべて同調していました。2倍、2倍と次々とほぼ同時に調整されて分裂が進行していました。 | 16細胞期の胚です。ここでも分裂後の細胞の大きさに明らかな違いが観察されませんでした。次の32細胞期の胚でも大きさに違いが見られませんでした。 | 天候が崩れてきたので、今回は男子の5名だけが近くの漁港でのウミホタルの採取に行きました。気温は低下してきましたが、海水温はまだ高く、多くのウミホタルを採取することができました。 | ||
顕微鏡を用いてウミホタルを観察しました。透明な二枚貝の中にミジンコのような姿が観察されました。エビやカニと同じような節足動物でした。但し、節の数は大きく異なっていました。 | ウミホタルは負の走光性をもっているため、写真左側から強い光を当てると、それから逃れるように右側に移動していく様子を観察しました。 | 高等部1年生の時に東邦大学理学部化学科生物有機化学教室の齋藤 良太 教授から学んだルシフェリン-ルシフェラーゼ反応が起こりウミホタルが発光している様子を確認しました。 |
朝食の準備の様子です。ここでは全員が配膳の準備をしました。普段の家庭ではこのようなことをしていない生徒もいましたが、自主的に自分の仕事を見つけて動けるようになってきました。 | 食堂では学校とは違った雰囲気で色々な話題で楽しい時間を過ごしました。この2日間の多くの時間は、実験や観察になるので、このような時間で仲間との会話を楽しみました。 | 1日経過するとシャーレの中でわずかに動いているものが観察されました。顕微鏡で観察すると胞胚や原腸胚となっていました。ここから先の発生の観察は、清本先生が色々な条件を変えて準備して下さいました。 | ||
後期胞胚です。細胞分裂を繰り返し、細かくなった細胞が球形に配置していることが分かりました。球形なので前後左右はありません。 | 胞胚の一部に陥入がおき、原腸胚が観察されました。周囲の繊毛によって水を動かして動くようになっていました。 | 原腸が更に内部に入り込み、嚢胚と呼ばれるものになりました。その後、ヒトデの場合はビピンナリアと呼ばれる幼生になりました。 | ||
ビピンナリアと呼ばれる時期の幼生が更に成長し、ブラキオラリアと呼ばれる幼生になりました。この後、幼生器官(写真右側:赤の矢印)がアポートシスを起こし、写真左側の部分(青の矢印)が変態していきます。 | 稚ヒトデの様子です。この頃には、五放射相称であることがよく分かりました。周囲に管足を伸ばしながらプレパラートの上を歩く様子を確認できました。 | 研究所の顕微鏡を用いてビピンナリア幼生の様子を観察しました。外側の繊毛を動かして周囲にあるケイソウを食べている様子を観察しました。 | ||
一人ずつ研究室にある高価な顕微鏡を用いて観察させて頂きました。高額な双眼顕微鏡を使わせて頂いたので緊張しました。 | すべての実習が無事に終わり、各自が2日間使わせて頂いた顕微鏡の清掃を行っている風景です。 | ステージや鏡筒など水で濡らしたガーゼを用いて拭き取り掃除を行いました。また、対物レンズもレンズペーパーを用いて清掃しました。 |
● | ヒトデには裏の5本の線のような所から足がたくさん出てきて、ひっくり返っても元に戻ることができることを学びました。そして、そこには神経が入っていることも分かり、その神経を使った実験で5つのうち、3つは放卵を起こさず、2つは核のようなものがあり、それがどうして起きるのかがとても興味深かったです。自分が見たことのないようなピペットを触ることができたり、遠心力で下に落とす機械などを見ることができて面白かったです。ヒトデが触るとプニプニしていると思ったのにかたくて驚きました。 |
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● | 細胞の分裂を自分の目で見たのは初めてで、とてもテンションが上がりました。海外で青いヒトデしか見たことがなくて今回のヒトデに少し驚きました。研究のために何匹のヒトデが使われているのだろうって考えちゃって、ヒトデにも感謝しなきゃなって思いました。 |
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● | 生物選択なのに減数分裂について言葉のみを知っていて仕組みなどは全く知りませんでした。ですが、実習を通して自分の目で減数分裂の様子を見ることができて一気に理解を深めることができました。ヒトデを今日のように間近に見ることも触ったこともなかったので本当に初めての体験ばかりで楽しかったです。第1減数分裂が途中で止まってしまい、ホルモンという刺激を加えることで分裂が再開するという話を聞いた時、最初はよく分からなかったのですが、色々な実験を通して理解できました。 |
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● | 神経からのホルモンがろ胞細胞に働かなければ成熟卵ができず、受精しないということが様々な実験を通して分かったので印象深かったです。また、最後にヒトデが胚から幼生になる過程では最初は1つの卵だったのにしだいに五放射に体が形作られていく様子はとても不思議でした。他の五放射の動物の成長過程も見てみたいです。幼生が偏光で光って見えるとは思わずおどろきました。きれいでした。 |
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● | まず、第1減数分裂を自分が観察していたヒトデで観察できないのは悲しかったです。でも、数十分後見たら、ちゃんと分裂してくれていたので、嬉しかったです。それから、第1減数分裂を見ることができなかったのですが、その後の精子の濃度に変化をつけて実験したときにはとても面白い結果が出たので嬉しかったです。また、前回私がウニの誕生についてここに実験しに来たとき、原因が考えにくい結果が出たのですが、今回の結果は内容が理解しやすく、考えるのが楽しかったです。学校の実験でアルコールの酵母による気体発生量について調べてて、今回と同じような考察が出来そうで、楽しみです。 |
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● | ヒトデの形や生態についてくわしく知ることができて面白かったです。また、減数分裂などの知識もあいまいになっていたので再び知ることができてよかったです。まだ濃度(神経の)についての発生過程のちがいに疑問が残るので、深く知りたいです。生のヒトデを見ることができて面白かったです。スケッチも実際にできたので理解が深まりました。 |
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● | 実際に発生の段階に向き合える機会はめったにないので、今までは教科書でしか見れなかったような内容を学ぶ良い体験になりました。今までは発生自体ではなくて、その周辺の再生医療にしか興味がなかったのですが、先生に教わり、その方向からも考えてみたくなりました。また、ヒトデは再生力が強いという話を聞いて、これを調べることで何か再生医療に役立てられないかと思いました。ヒトデを使った実験は自分ではできないので、今回の貴重な機会をいただけて本当に嬉しく思います。ありがとうございました。 |
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● | 生物専攻ではないので、減数分裂や受精、発現などに関しての知識をあまり持たずに参加しましたが、講義も分かりやすく、知識が足りなかった僕でも理解を深めることができました。当然といえば当然ですが、生物の種類ごとに発現のシステムも異なり、その違いや利点なども「おもしろい」と思う点が多くありました。特に印象に残ったのは、卵子の成熟という点でした。卵があればすぐにでも受精すると思っていましたが、その前に踏むステップが多くあり、興味をもちました。 |
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● | 減数分裂の内容ではないですが、ヒトデの神経が放射状にあることが面白と思いました。星マークような形をしていても、きちんと、きれいに神経が通っていることに、生物の不思議を感じました。また、実験中に、なかなか分裂が始まっている受精卵を見つけることができず、不安でした。でも、その後に8分割くらいになっているものを見つけることができ、それを発見したときはすごく嬉しかったです。私の喜びは小さいものであると思いますが、何かが分かる、という喜びを味わうことができるのが研究、実験の面白さなのだと改めて思いました。 |
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● | ヒトデの卵ができているところや、未成熟卵と成熟卵の違いなど、目でみて分かるものもあれば顕微鏡で見て分かるものもあり、様々な見方から卵や受精について理解することができました。卵割が顕微鏡の上においたプレパラートの上でおきていて、また、実際に卵割がおきていくところを観察できたことにとても驚きました。また、ヒトデの神経を自分でとってみたり、自分で卵をとり出したりと自分自身でできることも多く、とてもいい経験になりました。私は物理選択なので、今回の実験でついていけるか、しっかり理解できるか不安な部分もありましたが、先生の説明もとても分かりやすく、手順で分からないところがあったり疑問点があったら分かりやすく説明して下さったので理解することができたと思います。 |
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● | 実際に受精卵が分裂していくのを見たことは今までに一度もなかったので、自分の手で1から受精させて成長過程を観察することができたのは、とても楽しかったです。また、ヒトデを見たのも触ったのも今日が初めてだったので、思ってたよりかわいくて良い経験になりました。観察してると、いまちょうど分かれてる!という卵もあり、その過程を見るのがすごく面白かったです。ヒトデの神経をとってくる実験も、実際に自分で取ったり授業で習ったことはあったけど見たことなかった遠心分離の機械が見れて良かったです。今回、実験してみて、何で分裂するときは同時なの?など、色々疑問が湧いて楽しかったし、本当にたくさん知れて面白かったです。 |
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● | 卵の、ろ胞細胞や核小体などが一瞬で消えたこと、とても印象に残りました。普通の細胞の反応はとても遅くてゆっくりにもかかわらず、発生の過程では、あんなに速く消えたことにびっくりしたからです。また、同じような実験をするときは精子が卵子に入っていく瞬間と、ヒトデの赤ちゃんを見てみたいです。ありがとうございました。 |
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● | はじめは、何も分からない状態でした。でも実験を通していくうちに受精や発生について理解することができました。今回のように、実際に自分の目で見ることで、新しいことを知ることの楽しさを感じ、とても印象に残りました。なかなかこのような機会はないので新鮮で、良い刺激になりました。 |
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● | 受精卵から第1極体ができ、第2極体ができ、4つや8つに分かれていく過程が実際に観察できて良い経験になったし、教科書で見るよりも分かりやすかった。たくさんの卵を受精させても、受精しなかったり途中で壊れてしまうものもあって、すべての卵がヒトデになれるわけではないことも分かった。ヒトデの神経をとるのが楽しかったのでもっと色々な体の中身を解剖して知りたいと思った。この受精卵からどのように成体になっていくのかもっと知りたい。時間が経つにつれて受精卵の中身がどんどん分かれていくのが印象に残った。 |
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● | まさに無駄のない構成だったと思う。実験の合間の時間で実験で生じた疑問が解決できたし、理解しやすい順番だったと思う。ウミホタルは天候が悪く、男子しか海で採取しに行けなかったが、とてもいい経験になった。何よりも。「今、減数分裂してるんだ!」という時間を観察できたのはとても嬉しかった。 |
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● | ヒトデ卵母細胞のしくみなどはとても複雑だったが、100%ではないが理解を深めることができた。実際に自分の目で見てみることで、やはりよりこれらのことについて知ることができた。今後もこのような体験を自ら積極的にしていって、生物に対する知識をつけていきたいです。 |
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● | 普通の学校生活では体験できないことを体験、そして知ることができて良かったです。私たちは、今回ヒトデの命をいくつもいただいてこの実習をすることができました。普段だとあまり気にしないかもしれませんが、ヒトデが切られているのを見て、そう思い、命を無駄にしてはいけないので、今日、明日、しっかりと実習をしたいです。興味をもったことは、受精膜はどうやって作られるのか、ということです。受精してすぐに作られた受精膜は、はたしてどうやって作られているのかと思いました。あと、何故、極体が作られるのかも疑問です。どうして、わざわざ使わないものを作るのか気になりました。 |
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● | ヒトデが幼生になり、さらに違う幼生になるまでの過程が気になります。私が観察したヒトデの中にもこれは、幼生になる途中段階かなと思うものもいました。だから、動画等で変化を見てみたいです。また、ヒトデにどのように色がついていくのかも気になりました。今回、この実験に参加させていただいて、受精から見ていて、命って凄いと改めて実感しました。前に学校でウニの観察もしましたが、その時とはまた違うところもあって、面白かったです。ありがとうございました。 |
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● | 発生は一通り勉強した中で、独学ではとても難しいと思っていた分野なので、くわしく知ることが出来たのでとても良かったと思いました。この体験をこれからの学校での授業や受験や科学の甲子園で活かしていきたいと思いました。この体験をやる機会はもうないですが、最大限に活かしていこうと思います。 |