アフタースクール

高等部1年対象

ブタの腎臓の解剖

 1.実施の目的  医科コースは、国公立大学の医学部進学を目指すコースです。近年、全国的に医師希望者の増加に伴い、ますます難化傾向にある医学部受験に対して、進学実績を着実に上げてきました。その為には、強いる学習も勿論大切となりますが、医師としての教養を深めるためにも主体的な学習を行える機会を医科コースの生徒たちに適切に与えていくことが重要だと考えています。
 様々な実験や観察を行い、積極的な姿勢で勉強できる学習環境を学校全体で整えていきたいと考えています。そして、生徒たちの興味・関心を高めた上で、協働的な学び合いを通して、将来、世界を牽引する医療系リーダーとなる生徒を育成していくことが重要だと思います。
 そこで、今回は通常の授業時間よりも長い時間を比較的自由に設定することができる夏期アフタースクールで「ブタの腎臓の解剖」を行なうことにしました。日頃実践している授業内容をより深めた学習を行なうことで、「命」に対して謙虚な心を持ち、生物の複雑な構造や機能に興味関心を深めることを目的としました。

 2.実 施 日 平成30年7月31日(火曜日)
 @ 1校時目 〜 2校時目 :  8:50 〜 10:30 (100分) 高等部1年2組
 A 3校時目 〜 4校時目 : 10:30 〜 12:20 (100分) 高等部1年1組

 3.担当教師  理科教諭(生物担当)熊井 優

 4.実施場所  自然科学棟(生物学実験室)

 5.参加定員 高等部1年生(41期生)医科コース
 @ 高等部1年1組 26名
 A 高等部1年2組 30名

 6.実験内容 ブタの腎臓の解剖
入手しやすくヒトの腎臓と良く似た構造をしているブタの腎臓を用いることで、内部構造やその機能を理解させます。
ブタの腎臓を用いる利点としては、大きさや構造共にヒトの腎臓に非常に良く似ているだけでなく、食肉店で廉価に購入が可能であり、臓器のみを食用のものとして入手することが容易なことです。
@ 腎臓の外観や縦断面の観察から、血液から尿生成を行っている腎臓の機能を理解させます。
A 腎動脈に墨汁を注入することによって、腎臓内の血管の配置を理解させます。

実験風景

         
 食品用の腎臓ですが、ビニール手袋をしながら安全に考慮しながら解剖実習を行いました。先ずは、腎臓全体の様子を観察しました。重さは150〜200gで、触感はコンニャクのようでした。    食肉用に加工されているので「腎動脈」・「腎静脈」・「尿管」が切断されています。しかし、熊井先生の指導もあり、それぞれ3本の違いと仕組みを学ぶことができました。    気づいた点はすぐにメモを取りながら、スケッチとして記録していきました。近年はデジタルでの記録が主流となっていますが、何をしっかりと観察しなければならないのか明確にするためにもスケッチを重視しています。
         
         
 腎臓の縦断面です。「腎皮質」と幾つかの「腎髄質」に分かれていることが良くわかりました。「腎う」の辺縁に向かい側は「腎杯」となっており、その内部に尖った「腎乳頭」が見られました。    血管に墨汁を注入すると、表面に墨が行き渡り黒い点々として観察されました。注射器を腎動脈に挿入し、漏れないように注意深く墨汁を注入していきました。ここで漏れてしまう班も幾つかありました。    墨汁を注入した後の腎臓の縦断面です。「腎皮質」が墨で黒く染まっていることが分かりました。ここで薄く切り出した切片をスライドガラスに乗せて光学顕微鏡を用いて観察すると糸球体が観察されます。

生徒の感想

 ●  腎臓を切ってみて思っていた以上に固くて、特に「腎う」は固かった。また全体を触った感触はプルンっとして弾力があって意外だった。

 ●  初めての腎臓の解剖でしたが、うまく墨汁を入れることができました。墨汁の黒が表面に出てきて良かったです。また臓器に触るのも初めてだったのでとても楽しく勉強になりました。

 ●  魚の臭いがしました。教科書通りに上手くいって良かったと思います。人間にも応用できることなのでしっかりと記憶に留めておきたいと思いました。

 ●  最初は臭いがきつくてあまり解剖実習に乗る気じゃなかったのですが、実験をしているうちにだんだんと集中していき、楽しくなってきました。

 ●  腎臓を半分に切るのが固くて大変でした。最初は臭いがきつかったけれど、時間が経つと慣れて、構造を良く観察することができて良かったと思います。

 ●  見た目では肝臓を小さくしてマメのようなものだった。切り開いた状態を観察すると、一つひとつの組織がしっかりとしていました。人の体もこのようなつくりをしているのだと思うと、今回の解剖実習は非常に興味深かった。

 ●  尿を生成する場所なので始めは独特の臭いがした。動脈を見つけるのはとても難しく、注射をする時は不安でしたが、糸球体をしっかりと墨汁で染めることができて良かったです。

 ●  外から見るとただの肉の塊なのにもかかわらず、実はその臓器の中ではとても複雑になっていることを理解できて、とても興味深いと感じることができました。

 ●  実際に臓器を触れることで見た目だけでは分からない構造をしっかりと理解していくことができた。班員と協力し、手際よく作業を続けられたのがとても良かった。スケッチも細かく描くことができたので非常に参考になった。また今後も解剖実習に参加してみたいと思ったし、命の大切さも理解することができました。

 ●  臓器からはアンモニア臭がした。血管と尿管の区別が非常に難しかった。思っていたい以上に複雑なつくりをしていたが、実際に動脈や静脈を見ることができたので、とても良い経験になったと思います。

 ●  今まで学習してきた腎臓のはたらきを今日、解剖実習の中で再確認をすることができた。そして動脈、静脈や尿管の違いも見分けることができて良かった。そして何よりも面白かった。

 ●  見た目も臓器を触った時の感触も気持ち悪かった。そして臭いがきつかった。動物の腎臓の仕組みを知ることができて良かった。そして、この腎臓は動物の活動には必要不可欠な臓器であると考えると凄い重要なものだと感じることができた。


生徒のスケッチ

         
 【腎臓の全体の様子】@    【腎臓の全体の様子】A    【腎臓の全体の様子】B
         
         
 【腎臓の血管の様子】@    【腎臓の血管の様子】A    【腎臓の血管の様子】B
         
         
 【腎臓の縦断面の様子】@    【腎臓の縦断面の様子】A    【腎臓の縦断面の様子】B