いのちの学習会

1. 目的 医療従事者を目標とする生徒に対して、「いのち」や人権について考え、自他の生命を尊重する心を育み、次年度以降医科ジュニアコースを希望する生徒に対して、自分の進路に対する意識を一層高めることを目標とする。
2. 講師 見目 政隆 先生 NPO法人ハートtoハートジャパン理事、臓器移植患者団体連絡会幹事、厚生労働省厚生科学審議会専門委員(臓器移植)
高橋 一広 先生 筑波大学医学医療系 消化器外科・臓器移植外科 

3. 日程 12月1日 (金) 15:30 〜 16:30
4. 参加生徒 中等部 2年1組 (医科ジュニアコース)
中等部 2年2組 (医科ジュニアコース)
中等部 1年1組 (医科ジュニアコース)
医療従事者を将来の目標とする希望者


授業の様子(見目先生)

         
 中等部2年生は見目先生からご講話をいただきました。日本や世界における臓器移植の現状や見目先生のお子さんが経験した臓器移植までの経緯をお話しいただきました。
   日本の臓器移植の現状はアメリカやオーストラリア等と比べて法の整備や移植に対する認識が進んでいない現状があります。
   日本で臓器移植の法律が初めて作られたのが1997年ですが、脳死の方がドナーとなるには意思表示カードと家族の同意が必要でした。その後、日本臓器移植ネットワーク等の地道な活動の末、2010年には本人の意志が不明でも家族の承諾で臓器提供できるように法改正されました。

         
 見目先生の息子さんは、日本での臓器移植の見込みが少なかったため渡米し、臓器移植の手術を受けました。その後、娘さんも同じ病気にかかり臓器移植ため再渡米します。     当時、アメリカの病院では臓器移植をする際のルールがありました。自国以外の患者さんに臓器移植をする際、決められた患者数しか手術ができないというものです。アメリカの医師は、数を超えてしまうが移植しなければ助からないと判断し、手術を決断します。医師になったときに、正しい行動は何かということも考える機会となりました。
   今回のいのちの学習会を通して、患者さんの視点での臓器移植についてやあきらめずに行動すれば道は開けること、医療従事者としての倫理観についても考えさせられるお話でした。

授業の様子(高橋先生)

       
  中等部1年生は高橋先生にお話をしていただきました。     機械に臓器の代わりをしてもらう人工臓器、IPs細胞などで臓器を作り出す再生医療と臓器移植の違いを説明し、臓器移植のメリットや問題点を学ぶことができました。     世界の死体臓器提供数についてのお話もありました。日本は臓器移植が進んでいない現状があります。その理由として脳死判定の基準や過去の臓器移植に関すること、文化や宗教的理由を挙げていました。
       
 データを見ながら講話を聞くことで日本の臓器移植の現状が遅れていることを納得しながら聞いていました。     講話の中で、「臓器提供は、特別な誰かの尊い選択ではなく、私たちが決断することで支えられている」という言葉がありました。臓器移植について自分たちの問題として捉え、臓器提供するかどうか一人一人が考えていました。     学習会の最後には質疑応答に時間が設けられ、お話を聞いて疑問に思った点など質問しました。臓器移植についての講話は初めてだったので見識を深め、多くの生徒が家族と臓器移植・提供について話し合うきっかけとなりました。

感想(見目先生の授業を受けて)

●     私は、いのちの学習会に参加して臓器移植について考えを深めることができました。日本にドナーが少ない現状を踏まえて、理由はどのようなことでどうすれば救える命が増えるのか。昨年は講師の方が医師だったので医療現場での話を多く聞かせていたただいたのに対し、今回はNPO法人の方がお話してくださり、提供する側やされる側の家族の思い、そして現在の日本人の臓器移植に対する考え方を知ることができ、新たな視点から臓器移植を見つめ、考えることができました。私は、今回のお話の中でアメリカの医師が見目先生にいった言葉に感動しました。「ルールを破っても構わない。そうでなければあなたの娘さんは助からないのだから」この言葉は、医師とは何だろうと考え直すきっかけとなりました。医師の役割とは、お金を稼ぐことでも、地位を確立することでもなく、ただ目の前にいる患者一人一人に向き合い笑顔にすること、健康を取り戻してQOL(quality of life)の向上の手助けをしていくことだと思いました。アメリカの医師は目の前で苦しむ患者さんを助けるためならルールを破っても構わないと言いました。ルールを破れば、地位は危うくなり、最悪の場合免許を剥奪されるかもしれません。もし、自分が同じような場面に遭遇したとき同じ判断ができるか不安です。医師として命を預かる以上、患者さんのすべてを救う覚悟が必要です。そのことを考えさせられる機会となりました。
 
   
 ●    私は、今のところ臓器を移植する程の重い病気にかかったことはありません。そのため臓器移植に対してどこか遠い存在に感じていました。今回、いのちの学習会を通して、移植が決して遠いどこかのものではないということに気付きました。先生の息子さんや娘さんのように、幼い子どもでも病気にかかってしまう可能性は十分あるのだとわかりました。わかっていたつもりだったことですが改めて理解しました。また、先生は自分が思ったこと考えたことを行動に移しています。これは誰もが真似できることではありません。私も今回の学習会を通して家族で話し合い臓器移植についてより深く考えてみようと思いました

感想(高橋先生の授業を受けて)

 いのちの学習会に参加して、臓器移植について家族と話をしました。私は臓器提供したいと思っていませんでした。しかし、父には「家族が臓器移植しないと助からない場合どうするか」と聞かれました。私にとって家族は大切な存在です。家族と元気に暮らせるのであれば生体移植を望むかもしれません。健康であった人が生体移植によって亡くなる可能性もありますが、大切な人を助けたいという気持ちもあります。ここで命の尊さを実感しました。私が亡くなった後、自分の体で10名以上の人を救うことができるかもしれません。今回の学習会に参加して臓器移植や臓器提供について考える機会になりました。また、1人でも多くの人が助かるように多くの人が臓器提供や臓器移植について考える社会になっていかなければならないと感じました

 今回、いのちの学習会に参加して私が一番驚いたのは移植に対する日本と海外の考え方の違いです。私は以前から移植に興味があり、医療ドラマなどでも観ていたので、日本は移植が盛んに行われているのだと思っていましたが、実際には日本の移植の現状を知ることができました。
 また、移植をするには多くのルールや条件があり、そのルールや条件の多さから移植は簡単にできるものではないということも学びました。学習会の後、臓器提供について家族と話してみました。私は臓器提供できたら良いと思いますが、家族の中にはあまり前向きに考えてくれない人もいました。私の体や命が家族に大切にされていることを改めて感じると同時に、将来的に私一人の判断で臓器提供の意思表示をして良いのか難しい問題だと感じています。今回の学習会で日本の臓器移植の現状を学び、自分自身の命や体の大切さを改めて実感しました。



なお、この行事は昨年度より、「公益財団法人いばらき腎臓財団」(http://www.iba-jinzou.com/)の支援を受けて開催することができました。