第1回オンライン高校生模擬裁判選手権において 審査員特別賞を受賞

  2020年8月9日(日)に第1回オンライン高校生模擬裁判選手権が開催されました。

 森鷗外の小説「高瀬舟」を題材とし検察側・弁護側それぞれの立場に立って、殺人か同意殺人かをめぐって立証・弁護活動を行いました。大会では午前中に弁護側、午後に検察側として二試合行いましたが、早稲田大学高等学院との対戦において検察側証人の役割を担った高2のTさんがMVPにあたる審査員特別賞を受賞しました。
 チームとしては上位に入賞することはできませんでしたが、なかなか全員が集まって話し合いをできず、ほぼ初めて模擬裁判を行う生徒がほとんどの中、学校だけでなくオンライン上で話し合いを重ね、チーム戦でありながら、それぞれが自宅から参加する未経験のオンラインという大会方法の中、観戦していた他校の先生から本校の対戦は大変迫力があり見ごたえがあったとお褒めの言葉を頂きました。
 
 今回の大会では、初めての生徒でも模擬裁判が実施できるように、そして模擬裁判ということにとどまらず様々な視点からオンライン上で6月以降、全12回講義をしていただき大変貴重な経験をさせていただきました。また、各校だけの講座の日も設けて下さり、本校も個別にご指導いただきました。

 講師の先生方は、第一線で活躍されている先生方で、講座の内容は医師、弁護士、社会福祉、検察官、裁判官、冤罪被害者、犯罪学、文学、オンライン上でのプレゼンテーションの仕方と様々な視点からのものでした。講師の先生の中には数々の重大な刑事事件の弁護を手がけてきた後藤貞人弁護士(大阪弁護士会)や、兵庫県の施設で園児 2 人が死亡した「甲山事件」で無罪が確定した山田悦子さんのウェブ講義もあり、刑事事件の捜査や裁判について理解を深めることができました。
MVP受賞 
高2 Tさんの感想
 私は今までの人生で法律について触れたことは全くありませんでした。模擬裁判に参加しようと思ったのも視野が広がればいいな、という少しの興味からでした。経験者が少なく、初めは皆何をすればいいのかわからずただただ時間が過ぎていっていました。各校だけの講座の日に、先生方にボロボロにダメ出しをされてからやっと方向性が決まり、そこから青春の二週間が始まりました。
 しかし、学年、クラス、部活が違い実際にあって会議をするのはどうしても難しく、いつも学校から帰ってオンライン上で会議をするような日々が続きました。チーム内で言い争いがあったり、なかなかみんなが集まれなかったり、仲間に頼りっぱなしになってしまったり、沢山不安がありましたが、話し合いをどれだけ重ねてもどんどん新しい意見が出てくることを楽しいと思うようになりました。きっともっと時間があったらまた違った結論が出ていたと思います。朝、昼休み、放課後、そして直前には部活を休んで、寝る時間を惜しんでも終わらずオンラインの会議中に泣いたこともありました。
 私は証人役をやったのですがどうしても自信を持つことができず、自分が勝敗を分けるような大切な役を担っていいのか、ずっと不安を抱えていました。でもそんな時、いつも仲間が私を励ましてくれて、私はそれに救われました。終わりが見えず面倒くさくなって逃げ出したくなったときありましたが、仲間の存在が私を支えてくれました。模擬裁判に参加していなければこんなに個々の人間性を知ることがなかったと思うので仲間に出会えて良かったなと思います。
 また、授業に関しても、様々な経験をした大人達が深い話をしてくれて、今まであまり考えてこなかったことも考えさせられて確実にものの見方は変わりました。まだ完全燃焼させられていない授業の内容などにこれからは取り組んでいきたいです。準備期間は本当に辛いことや大変なことの連続でしたが、実際に終わってしまうと、とても寂しい気持ちになっています。本番も直前まで手直しをしてみんなで励まし合って挑みました。私がMVPに選ばれたと知った時は、嬉しかったけれど頑張ってきた仲間の中で私だけが賞をもらうことに一瞬申し訳なさを感じました。しかし発表された瞬間、仲間がたくさんの温かい祝福の言葉をかけてくれてとても嬉しくなったし、このMVPは皆でとったものなのだと気付かされました。何回も泣いたけれど結果として賞をもらうことができて、今まで頑張ってきてよかったと心から思いました。
 私は来年はおそらく参加できませんが後輩たちにはもっと頑張ってもらいたいです。先生方に中途半端にだけはするな、と言われました。私はもちろんもっと早くからやればよかったとは思いますが全部出し切れたので後悔はありません。これから何かに取り組む際、全力で、中途半端にならないようにしたいです。また、私は今回参加して何かを得ようとするときはとりあえず自分から動かなければいけないということを学びました。自分から動いて模擬裁判に参加し、沢山のことを学ぶことができ本当に良かったです。模擬裁判は私の高校2年生夏の青春でした。これからも何かの形で模擬裁判に関わることができたらいいな、と思います。

試合当日朝のミーティング
 
Teamsを利用して共同作業
参加者感想一部抜粋

高2 Aさん
 最初に『高瀬舟』を読んだ時は喜助が可哀想だ、という感情しか生まれませんでしたが、今は数え切れないほどの見方を持っています。ここまで深読みした文章は他にないので、一生忘れないと思います。
 そして、事前の講義では様々な貴重なお話を聞くことが出来ました。特に山田悦子さんの講義では、日本の冤罪の実情を知ることができ、自分も日本人として日本の法律についてもっと知ろうとしなければならないということを痛感しました。
 大会当日、私は弁論を主に担当しましたが、時間をオーバーしてしまったり、事実から導ける内容が少なかったりしたことが反省点です。
 模擬裁判で獲得したスキルや知識をこれからの生活にも活かしていきたいです。

高2 N君
 講義では、教材を様々な視点から捉えることで、自分の視野が広がった。特に、「タミ婆さんがいなかったらどうなったか?」という仮定について考えるのは、それまで疑問に思わなかったのが不思議なほど面白かった。
 また、事実と評価の違いなど、今まで気にしていなかったことについて注意するようになった。
 大会当日は、ギリギリまで質問や尋問、論告、弁論について検討して臨んだものの、問題点が多くあった。中でも、反対質問や反対尋問の時間配分に問題があった。内容を充実させようとするあまり、相手が答える時間をあまり考慮せずに詰め込みすぎてしまった結果、満足のいく質問、尋問ができなかった。
 この大会に参加して、論理的思考力など、様々な能力が向上したのを強く感じる。今回の体験を生かし、今後は物事をより一層深く捉えられるように成長していきたい。

高2 Y君
 普段普通の高校生として生活していたら関わることが少ない現役の弁護士や裁判官、大学の先生方などの講義や意見を聞くことができ貴重な体験ができました。
 また僕たちは本校のみの講座のときまでに事実上げなどの基本的なことができていない状況でした。そこからチームのメンバーとできるだけ集まれるように調整して、自分のことよりも模擬裁判にのめり込み、大会まで準備できたのでこのような一つのことに打ち込むことができたことはとても良い経験になりました。
 今回の大会全体を通して、人前で話すことやチームでの議論に参加し一つのものを作り出すことが今後の自分に役立つと思います。

高2 I君
 今回参加しようと思ったきっかけは、去年の夏休みに東京地方裁判所へ裁判の傍聴をしに行き、法曹界に興味を持ったからです。しかし法曹界で働くためには法律について大学や大学院で学ぶ必要がある事や司法試験に受かる必要があり、正直ただ法律を覚えるだけであまり面白そうではないと思っていました。しかし、今回大会に参加し良い弁護士、検察官、裁判官になる為には多彩な人生経験、またそれらの人生経験から生まれる多方からの視点が重要であると講師の方の話や高校生模擬裁判を通して知りました。
 一人の人間(今回は喜助などの登場人物)に対して、その人の過去や行動など様々な視点からどの様な人なのかここまで考えたことは今までありませんでした。はじめは名前と年齢、職業などの基本的な情報しか分からない状態からスタートして、様々な行動や発言からだんだんと人物像が浮かび出て来て、他の人の意見を聞いて、より細密な人物像になっていく事がとても面白かったです。裁判で実際に本人に質問する質問内容も他の人と議論する事でこれは必要ない質問だ、逆にこれは絶対に聞いた方が良い質問だ、この質問をしてからこの質問をしようなどと人によって考え方が異なり色々なことを学ぶことができました。

高2 M君
 いろいろな講義を受けることができ、今回の模擬裁判に関係のあるものからないことまで多くの知識を得ることができた。先生方の実際の体験談なども聞くことができ、良い機会となった。準備ではみんながなかなか集まれないなどと大変な点もあったが、調べ方や協働力を高めることができた。
 しかし、自分から動くことが少なかったので今後、チームとして動く機会があればもっと主体的に動いていきたい。今回の模擬裁判に参加して得るものは多かった。今回得たものを糧にして自分を高めていきたいと思う。