アフタースクール

東邦大学 出張講義

1. 実施目的 大学の専門分野の講義を聴くことによって、自然科学の魅力や、奥深さを感じ取り、今後の学習に活かすことを目的とする。
多忙な先生ですが、今年度も大学を通じてお願いし、本校において今夏のアフタースクールの講義をして頂けることになりました。

2. 実施講師 東邦大学大学 理学部 物理学科 物性物理学教室 教授 西尾 豊

3. 実施日程 平成30年7月31日(火曜日)
 @ 1校時目 〜 2校時目 :  8:50 〜 10:30 (100分)
 A 3校時目 〜 4校時目 : 10:30 〜 12:20 (100分)

  
4. 参加生徒 高等部1年生(41期生)医科コース
 @ 高等部1年1組 26名
 A 高等部1年2組 30名

 5.  講義内容    マイナス200度の世界を体験しよう
  液体窒素を用いて極低温の世界を体験します。極低温の世界では空気が液体、または固体になる世界です。我々が生活し体験している(高温の)世界では考えられない超伝導などの世界を体験しましょう。

参加した1年2組の生徒と西尾先生(中央上段)との集合写真です。
本校自然科学棟 化学実験室β において

実験の様子

     
 今年も万全の配慮をしながら、機知に富んだ講義と共に液体窒素を用いた実験が始まりました。多量に入れた液体窒素の中に手を入れる西尾先生です。  インターネットやテレビなどでは見たことがありますが、実際に体験する生徒は、ほとんどいませんでした。やはりはじめは生徒は怖がってています。  目の前の不思議な現象を、物理学の正しい視点で捉える大切さを学びました。なぜそのような現象が起きのかということを、自分たちなりに考える重要性を教えて頂きました。
 
     
 大きく膨らました風船です。液体窒素を用いて冷却すると風船は萎んでいきました。西尾先生は常に「再現性が重要」と話しながら、何度も実験を繰り返して下さいました。    冷却された風船の中には、牛乳のような白い液体があり、風船をハサミで切り確認しました。すると、その白い液体は蒸発し、最後はドライアイスが残っていました。    気体の酸素を冷却し、液体酸素を作りました。その液体酸素の中に火の付いた線香を入れると激しく燃え出しました。この不思議な現象を西尾先生は科学的に分かりやすく説明して下さいました。
  
       
         
 不思議な現象の背景には、自然科学で説明できる様々な理論があります。実際に目の前で起きた一見すると奇妙な現象を、西尾先生は大変分かり易く説明して下さいました。  西尾先生のご専門である、超伝導物質における「マイスナー効果」(完全反磁性)と「ピン止め効果」を見せて頂きました。浮き上がっている超伝導物質の回転の様子から、その違いを教えて頂きました。  最後は液体窒素を自然科学棟の廊下に流しました。浮き上がった液体窒素の液滴は摩擦が少ないので等速直線運動をしているようでした。しかし、液滴は蒸発しているので加速しているはずです。実際は空気抵抗と質量減少のバランスが重要であると説明して下さいました。

生徒の感想

 ●    液体窒素はテレビやインターネットでも見たことがありますが、実際に手を入れたことはありませんでした。瞬間に蒸発して気体の窒素の膜で覆われるから大丈夫だと西尾先生が言われたものの手を入れるのには勇気がいりました。しかし、正しく理解することで安全に実験ができることを教えて下さいました。とても感動しました。

 ●    硫化水素に高い圧力をかけることで超伝導物質になることに驚きました。始めはOnnesが水銀を冷却していく時に発見され(1913年ノーベル賞)、その後、いろいろな金属で同様な現象が見つかり、複雑な金属の酸化物に変化していきました。臨界温度はどんどん上がっていったのですがまだ常温まで達成していないそうです。しかし、理論がまだ充分に追いついていないので新しい物質群で超伝導状態が発見される度に理論が置き換わっていくということから、最先端の研究では今までの常識が移り変わっていくことを教えて下さいました。そして、それらは実験を通して考えていくことが重要だと分かりました。硫化水素のような共有結合でできている分子が、超高圧条件では金属のような性質となることや、金や銀では超伝導が見つかっていないのも不思議で謎だらけでした。

 ●    低温にすることで熱振動に隠れていた原子や分子などの小さな世界の量子力学における現象が顕著になっていくことは難しかったですが、不思議な現象があるのだと知りました。量子力学で支配される不思議な世界を見ることができてとても面白かったです。