おススメの本 その5

 

アヒルと鴨のコインロッカー   伊坂幸太郎  創元推理文庫

  今さら声高にいうことではないのかもしれないが、伊坂幸太郎はすごい。こんなに読者を驚せる小説はなかなか書けるものではない。これ以上何かを言うとネタバレになってしまいそうなので、あまり多くは言えないが、これを読まずにいるのは損だということは断言してもいい。予備知識無しに読むのが、この本を楽しむためのこつだと思う(すでに少々予備知識を書いてしまっているのが申し訳ないのだが)。伊坂幸太郎と言えば、伏線の妙。この作品はそれが存分に楽しめる。小説の面白さを堪能できる傑作である。必読。

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造花の蜜  連城三紀彦  ハルキ文庫

  連城三紀彦と言えば、優れた恋愛小説の書き手として知られているが、もともとはバリバリのミステリ作家である。初期の短編を集めた『戻り川心中』(ハルキ文庫)はミステリファンなら絶対に読み逃せない傑作揃いの短編集である。一時期はミステリを離れて恋愛小説や普通小説ばかり書いていたが、最近はまたミステリに力を入れて、素晴らしい作品を次々と発表していた。特に今回紹介する『造花の蜜』(2008年刊)は著者得意の誘拐物。文庫版では上下巻に分かれているが、長いとは感じない。著者の超絶技巧を味わうべし。これから新たな代表作が生まれると期待されていたが、2013年急逝。ミステリ界に大きな衝撃が走ったのだった。

 

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放課後探偵団  相沢沙呼他   創元推理文庫

 新鋭作家5人の書き下ろし短編集。タイトルからもわかる通り、学園推理もの。出版社の紹介文によると、「1980年代生まれの新人五人が、〈学園〉というくくりで若い読者層に向けてミステリを書く、というのが今回のコンセプト」だそうで、中高生が読むのにふさわしい内容になっている。新鋭といえども、そこは信頼のブランド創元推理文庫から出ているだけあって、なかなかの粒ぞろい。特に最後におかれた梓崎優「スプリング・ハズ・カム」はミステリ初心者ならずとも思わずため息が出てしまうような傑作。これからブレイクする作家を見つける楽しさもある好短編集。

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The TEAM(ザ・チーム) 井上夢人  集英社文庫

 盲目で難聴の人気霊導師、能城あや子。百発百中の"霊視"を支えるのは、個性あふれる仲間たち。そのチームワークで過去の事件の真相や、不思議な現象の真実を次から次へと暴き出す。何も考えずに楽しい時間を過ごすためにはうってつけの極上ユーモアミステリ集。原作に忠実にテレビドラマ化したら、きっと面白い作品ができるだろう。シリーズ化もできそうなのだが、今のところこの一冊だけというのがもったいない。あまりミステリを読まない人でも楽しく読めるエンターテイメントのお手本のような作品。

 

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