よい子のアウトドア倶楽部

 

ワンダーフォーゲル同好会夏合宿

 

〜燕岳・大天井岳・常念岳〜

 



7月29日

午後5時、取手駅西口に集合。翌日の食事や共同の非常食を購入する。僕は山での食事を想像しながら、OBの穂積先輩とおにぎりを買った。食料の購入が終わり、電車で新宿へ。新宿に着くとホームに新聞紙を敷いて電車の出発まで毎年恒例のトランプ大会と駅周辺での夕食をとる。これも夏合宿の楽しみの1つだ。トランプは専ら大貧民をやった。大貧民になると正座して何も話さないというルールが適用され、いつもより緊張感のあるトランプとなった。午後11時50分、急行アルプスがようやく新宿を出る。夜景がきれいな新宿を抜け、明かりが少なくなる頃にはうとうと眠りに入る。

 

7月30日

午前4時半過ぎ、夏の早い夜明けが訪れる。あたりは山ばかり。いよいよ登山だと、感じる瞬間だ。穂高駅について、中房温泉までタクシーで行く。7時ごろ中房温泉に着くと、朝食をとる。この山での食事がおいしい。とは言っても、前日ロー○ンで買ったおにぎりと、○うきゅうで買ったスープなのだが。

そして待ちに待っていた登山が始まる。合戦小屋まで想像以上にきつい登りが続く。始めのうちは早く頂上に着きたいとわくわくしながら登る。しかし、次第に疲れが襲ってくる。下界が遠のき、ガスが出てくると景色がとたんに見えなくなる。景色が見えるときは疲れも大したことはないのだが、景色が見えないとなると疲れは倍になる。こうなると、30分毎の休憩が嬉しくなる。合戦小屋を過ぎると、傾斜はゆるくなるが独特の形の岩が出てくる。ここで、あたかも急な斜面を登っているかのような写真を撮った。小屋はまだかまだかと思っていると、いきなり燕山荘が見えた。小屋が見えると疲れも忘れる。小屋で飲むジュースが格段にうまい。下界とは比べ物にならないぐらい高いが(約4倍)下界で飲むジュースよりも何倍もうまいから仕方がないかもしれない。

          

          

  

木陰で1本。

顧問の先生が写真を撮っている。

                    

やっと着いた燕山荘

そして少し休息をとると荷物を小屋に置いて、燕岳頂上へ。燕は花嵩岩でできた、変わった形の岩が多い。そこで写真を撮ったり、岩に登ってみたりした。この写真も随分角度をつけてあたかもロッククライミングをしているかのような撮り方をした。今回の合宿では岩場がなかったため、燕の岩に登るのは特に面白かった。そして標高2682mの燕岳山頂に到着。荷物がないから楽だった。ガスに覆われて景色が余り見えなかったのは残念だが、山頂に登った嬉しさというのに変わりはないものだ。頂上付近で紅茶を飲み、非常食という名のお菓子を食べて楽しいひと時を過ごした。小屋へ戻ろうとした時、加藤君が幸運にも雷鳥の親子を見つけた。親鳥と雛が6羽の計7羽。こんなにたくさんの雷鳥に出会うのにはいくら北アルプスとはいえ、驚いた。そっと追いかけて写真を撮ると、小屋へ戻った。

 

        

        

燕山は奇岩がとても多い山だ。

燕山から燕山荘を臨む

山頂でポーズ

奇岩の大きさを見て下さい。

その後、穂積先輩と一緒に高地トレーニングとして、ジョグをした。想像以上に標高2500m以上の高地は辛い。平地なら軽く走れる速さでも、すぐに息が切れる。そういう高地で、無謀にも段階的にぺ一スを上げるビルドアップをしてしまった。走り終わった頃には頭がくらくらして、完全に酸欠状態だった。やはり山は侮れないと、当然のことをいまさらながら感じた。


その夜、ワンゲル3年目にしてようやく、きれいな星空を見た。今までは毎回寝てしまったが、今年は起こしてもらって、穂積先輩の明かりを頼りに燕山荘の外で5分〜10分ほど星を見上げた。本当はこんな事もあろうかと、懐中電灯を用意してきたのだが、何と電池切れに…。僕は全くおっちょこちょいだ。外は凍るように寒かったが、初めて見る山の透き通った星空にいつのまにか寒さを忘れ完全に見入ってしまった。僕の勉強不足なのか、知っている星座なんかごくわずかで、満天の星空には知らない星座、知らない星ばかりだった。5分や10分などすぐに過ぎた。



7月31日

日の出前、みんなと一緒にご来光を見に山頂へ。途中、再び雷鳥を見つけた。そこで少々時間をとられたため、急いで山頂へ向かう。小屋を出たのは35分ごろ。目の出は4時50分前後。時間がない。通常30分を要する道なのだ。半分走りながら登る。陸上部で毎日体を鍛えているつもりだが、歩いたり岩を登ったりするのは、足が長い加藤君の方が遠い。感心しながら先を急いだ。この日は天候に恵まれ、遠くの槍・穂高の頂きが一足先に朝日を受けて輝いている。さすが3000m級の名山だ。特に去年悪天候のためあと一歩という所で引き返した槍ヶ岳は、皮肉ながらきれいだ。左手にその槍・穂高を見つつ懸命に山頂を目指した。ぎりぎりセーフ。なんとか間に合った。頂上はとても静かだ。ゆっくりと太陽が昇ってゆく。次第に付近の山々が赤く輝いていく。実に神秘的だ。頂上でのご来光は普通の「朝日」とは訳が違う。2年前唐松岳でもご来光を見ることが出来たが、どちらも忘れがたい感動を覚えた。記念に朝日と山頂のプレートをバックに写真を撮り、出発に間に合うように急いで小屋へ戻った。

    

    

燕山頂のプレートです。花崗岩でできていた。

燕山での日の出です。


お世話になった燕山荘を出発して、夏の強い日差しを背中にもろに受けながら今日の行程は燕山荘から大天井岳を経て常念岳への縦走。距離が長く、その上ちょっとしたアップダウンがあったため、一番厳しい行程となった。ひたすら歩く、歩く、歩く。真夏の太陽は容赦なく照りつける。しかも稜線上は太陽をさえぎるものは何もないのだ。しかし、登山道が稜線から少しずれて木陰に入れば、今度はとても冷たい風が襲う。ここが山の天候の厳しいところだ。縦走路では右手に雄大な槍・穂高連峰を望むことが出来た。さすが槍・穂高。青く輝いている。随分歩くと大天井の手前からは急な登りとなる。顧問の池田先生がばててしまい、ザックを引き受けたが、前にザック、後ろにもザックでは前が見えない。結局、しばらくすると穂積先輩が担いでくれた。こうしてようやく頂上近くの大天荘に到着し、大きな石が続く大天井岳頂上へと向かう。標高2922mの大天井岳は今回の合宿で最も標高が高くなる。頂上では随分近くに見えるようになった槍ヶ岳が青空をバックに一層素晴らしい。槍ヶ岳をバックに、大天井だけ頂上で小さな祠とともに写真を撮った。

        

慎重に

階段状の登りはとても厳しい

雲の彼方まで続く登山道

アンテナの向こうは大天井岳の山頂

 

大天荘を出て、また歩く。みんながばててきた頃に東大天井岳で昼食をとった。残雪と大空を見ながら寝転がった時は本当に気持ちが良かった。そして常念岳へ向かう。ガスに覆われ、前が見にくい状態になったが、それでも去年の槍ヶ岳よりましだ。何しろ2m先が見えないくらいだったのだから。それにしても常念岳までめ道のりは長かった。特に景色が余り見えない中での登山は長く感じた。ようやく、常念小屋に着いて一休みすると、穂積先輩を先頭に頂上を目指した。出発は15時半ごろ、17時の夕食まで往復1時間40分かかる頂上に行くのには時間がなかったが、一生懸命登ればすぐに着くだろうと高をくくっていた。しかし、実は登っている途中頂上と思っていたのは通称「偽常念」で、頂上はさらにその先であった。偽常念と知ったときには本当にがっかりした。またしても、山の厳しさを感じた。単に僕らがマヌケなだけかもしれないが…。そんなこともあってようやく頂上に到着した時は一層感動があった。小さな祠をバックに一緒に登ってきたお年よりのご夫婦に写真を撮ってもらった。頂上では、ガスの間からかすかに穂高が見えた。前常念岳まで往復70分という近さなので、行ってみたいと思ったが、当然勝手な行動は出来ないし、その上残雪が深くて立ち入り禁止ルートになっていた。前常念は当然行けなかったが、僕たちはとても満足した。頂上で軽く非常食(つまりお菓子)を食べでゆっくりと頂上の雰囲気を味わった。さすがは日本百名山のひとつだ。加藤君と僕は、燕岳・大天井岳・常念岳を全て登頂した上、燕岳山頂でのご来光も楽しんだ。とても賛沢をした気分だ。

         

穂高連峰。白く見えるは涸沢。

槍ヶ岳から北穂高岳までの縦走路

    

見えるピークの先に目的の常念岳がある

しかし、夕食まで時間がない。小屋へ急いだ。僕は下りが苦手だ。みんなはどんどん下ってゆく。急いでも急いでも追いつかない。中腹まで下るといつのまにかみんなの姿は小さくなっていた。さすがに走って下山すると命の保障はない。しかも常念は登山道が大小の石で出来ているので、不安定だ。道もわかりにくい。登山では登山道を間違うと命取りだ。遭難の多くは登山道から外れた時に起こる。だから慎重に正しい道を下っていった。結局、無事夕食には間に合った。何とこの日の夕食には肉が出た。(といっても少しだが)山小屋で肉なんて食べられるとは思ってなかったからびっくりした。これはヘリコプターで食料を運ぶようになったからだそうだ。

充分食事を楽しむと、翌日の準備と寝る準備をしてリラックスしたひと時をすごす。穂積先輩から陸上の話や大学受験の話など、いろいろ勉強になる話を聞かせて頂いた。その後、星を見に行った。今度は防寒具をしっかり身にまとって行った。そこで満天の星を見上げながら、「常念の頂上マジすごいよ一。行ってきなよ。安藤君なら1分でいけるよ。」なんて安藤君をからかったりした。それにしても本当に山での星は素晴らしい。僕の住んでいる東京など、見えるのは1等星、せいぜい2等星までだ。取手でも学校付近やふれあい道路では3等星が限界ではないかと思う。山では6等星まで軽く見える。僕は視力が悪いので、そこまで見えないかもしれないが、とにかく星座早見に載っているような星は全て見える。そこで、北極星を探してみた。一瞬で見つかる。心癒されるひと時である。そこで、流れ星を探すことにした。高2の浦部先輩と吉原先輩はたくさん見つけたようだが、僕はたった3つしか見られなかった。でも、流れ星は滅多に見られないから、貴重な良い経験だったと思うし、きれいだった。願い事?そんなことできるはずがない。「あ、流れ星だ!」と言っている間にもうとっくに消えてなくなってしまうのだ。結局流れ星に願い事などせず、自分でかなえなさいとの神の意志なのだろうか…。


それはさておき、僕たちはすごいものを見た。それはUFOだ!初めは飛行機かな?と思った。しかし、光っているのは1つだけだ。それに飛行機がこんな山の中に飛び込んでくるはずはない。しかも蛇行運転というか、飛行経路が複雑だ。飛行機だったらとっくに墜落している。やはりUFOだ!下界に戻ったら大ニュースになっているぞ…。というのは冗談だが、とにかく正体不明の飛行物体を見た。結論から言うと、それは人工衛星だったようだ。地球上には何百という人工衛星が空を飛んでいるから1つぐらい見つけたからといって大したことはないのだ。僕たちは実に単純だったようだ。とにかく、満天の星空を見上げていると心が安らぐ。もちろん、星だけでなく、登山すること自体が心を癒す。1年にたった一度の登山。本当に貴重な時間だ。星空を見上げていたら、先に戻っていた穂積先輩が心配して迎えにきてくださった。相当長い間眺めていたようだ。小屋の中に入るとき、同じ小屋に宿泊しているおじさんがモールス信号をやっていて少し教えてくれた。どうも僕たちを常念小屋の従業員と勘違いしていたようである。だがモールス信号は面白かった。すぐに忘れてしまったが。



8月1日

いよいよ最終日の朝である。目の出は時間がないため小屋から見た。朝食をとって準備を完了したらお世話になった常念小屋を出て下山だ。一ノ沢まできつい下りが続く。下りが苦手な僕は大変だ。しばらくすると一ノ沢に到着した。一ノ沢の水は冷たかったが透き通っていてきれいだった。一ノ沢を過ぎると高山植物が豊富になる。様々な種類のきれいな植物に囲まれながらひたすら下る。顧問の池田先生にいろいろ植物の名前を教わったが、僕はすぐに忘れてしまう。脳が花は観賞するもので勉強するものではないとでも思っているのだろうか。なかなか受け付けない。それはともかく自然に囲まれて下山できたのは下りが苦手な僕にとって救いだった。傾斜がほとんどなくなった頃に蝶が出てきた。歩きながら左手を出すと、左手にとまってその後僕の頭の上をくるくると回って去っていった。

一ノ沢登山口まで下山すると、山の上とは違い非常に暑い。タクシーで松本に着くとそこはもうそこは下界と同じだ。猛烈な日差しが襲う。「ああ、山の上がいい!」と思う瞬間でもある。松本で昼食をとった。何と池田先生が全員にそばをおごってくれた。本場信州のそばはうまい。松本でお土産などを買うと、ハンバーガーとアイスクリームを買って電車へ。池田先生に笑われてしまった。電車でそれを平らげると、急に眠気に襲われてうとうとと眠りについた。

15時38分ごろ新宿に到着する。去年と違い冷房故障などを起こさずに無事到着した。ここで解散。4日間の合宿は過ぎてしまえぱ一瞬だ。来年の合宿を想像しながらそれぞれ帰宅する。来年が楽しみだ。今年は唐松岳から不帰の嶮を経て白馬鑓の予定だったが、顧問の先生の急病で急に変更となった。しかし、とても楽しく充実した合宿となった。来年は、やはり不帰の嶮に行きたい。


文責:中等部3年 丹 羽  佑 輔

写真:中等部3年 安 藤  翔 太

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